油糧酵母ロドトルラ属 全ゲノム解析から実験室下での染色体変異の蓄積を発見 東京農大2025年12月18日
東京農業大学総合研究所酵母多様性生物学・分類学研究室、理化学研究所バイオリソース研究センターを中心とした研究グループは、脂質生産性の酵母ロドトルラ属の全ゲノムを解読し、染色体全長レベルのゲノム情報を整備。ゲノムの比較解析から、保存菌株において培養過程で生じたとみられる染色体構造変異が存在することを確認し、自然界では通常発生しない変化が実験室下で起こっていることを発見した。
酵母は、アルコールの醸造やパンの製造に使用される出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeに代表される、単細胞性の真菌類の総称。代表種であるS. cerevisiaeは子嚢菌と呼ばれる菌類のグループに属すが、菌類のもう一つの主要グループである担子菌にも酵母の形態菌類は多く存在する。
その中で、担子菌のRhodotorula toruloidesは赤桃色のコロニーを形成する酵母の一種。発酵の活性は持たないが細胞内に脂質を蓄積する特徴があるため、バイオ燃料の生産などへの利用が期待されている。
今回、研究グループは、この酵母のゲノム情報を整備するとともに種内の多様性を調査するため、R. toruloidesを中心としてリソースセンターに保存されている4種11株の酵母の全ゲノムを解読し、染色体全長レベルのゲノム情報を構築。その結果、この仲間の酵母の染色体構造は多くの菌株で概ね保存されている一方で、R. toruloidesの一部菌株において多数の染色体の転座が確認された(図)。
図:解読した菌株の系統関係と染色体構造。系統樹上の灰色の枝は実験室下で分岐した菌株。
黒い矢印と赤・青の矢印は菌株特異的・系統特異的な転座(右)とその発生したタイミング(左)を示す
この染色体構造の違いは系統関係と照らし合わせると明らかに不自然で、同一の単離株由来の菌株間にも複数の転座が見られることから(図)、人為的な培養下で発生した、自然界では通常発生しない変化であると考えられる。これらの染色体構造変異の起こった菌株は外見的には目立った違いがなく、今回の染色体全長レベルのゲノム情報によって初めて判明した変異となる。
微生物にはさまざまな生理活性を持つものがあるため、物質生産をはじめ多くの利用がなされている。今回見つかった染色体の構造変異は、見た目の性質には大きな違いがなくても掛け合わせによる育種などに影響を与える可能性があるため、微生物資源の品質管理において重要な知見となる。
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