一足早く2025年の花産業を振り返る【花づくりの現場から 宇田明】第75回2025年12月18日
花産業は松市が終わり、その後は千両市に万年青(おもと)、南天、梅など迎春花材が続く年末商戦真っ盛り。そこにバラやガーベラが主役のクリスマス商戦が重なり、生産者と市場は止め市まで、小売は除夜の鐘まで、息つく間もない日々が続きます。
そんな殺気立つ現場を横目に、本コラムでは一足早く2025年の花産業を振り返ってみます。
なお、以下の2025年データは1~10月の実績をもとに筆者が推定したもので、農水省などの公式統計ではありません。
「花より団子」がいっそう鮮明になった消費動向
2人以上世帯の切り花購入額は、コロナ禍以降は下落に歯止めがかかり、2025年は前年比1.5%増と推定されます。
ただし、これは消費が回復したというより、花屋の値上げの影響によるものです。
その証拠に、年間の購入回数は減り続けています。
2025年の推定購入回数は6.9回。
前年の7.2回から0.3回減りました。
2000年の10.3回と比べると、25年間で約3分の2にまで落ち込んだ計算になります。
今年は、いわゆる米騒動に象徴されるように、生活必需品の値上げが相次ぎました。
その結果、不要不急とされがちな花は、真っ先に買い控えの対象となりました。
2025年は、「花より団子」が一段と鮮明になった年でした。
小売の「ステルス値上げ」が消費量をさらに押し下げる
花は、ほかの商品が値上がりするだけでも買い控えがおきます。
全国展開の高級花店を除けば、仕入価格の上昇を即座に売価へ転嫁するのは容易ではありません。
そこで広がったのが、いわゆる「ステルス値上げ」。
特に、スーパーの置き花やパック花で顕著でした。
売価は1束298円、398円と以前と変わらない。
しかし、中身は3本が2本に、5本が3本になるなど、入り本数が減っています。
ボリューム感を保つために、スプレー系の花や葉物を組み合わせて調整するケースも増えました。
売価を上げず、数量を減らすことで仕入原価の上昇に対応した結果、切り花の消費数量はさらに減少しました。
花市場は「品薄・単価前年並み」で取扱高が減少
生産と小売の間に立つ花市場は、両者の影響をまともに受けます。
昨年までは、生産減による「品薄・単価高」に支えられ、取扱高は伸びていました。
しかし2025年の市場入荷量は推定で前年比4.6%減。
品薄は一層深刻化しています。
それにもかかわらず、単価はようやく「前年並み」にとどまりました。
その結果、「入荷減・取扱高減」という状態に陥っています。
しばらく続いた品薄による高値相場に、花屋がついていけなくなったことが背景にあります。
花屋が選んだのは、前述した「ステルス値上げ」による使用量削減でした。
その影響を、市場はもろに受けたのです。
輸入も国産減を補えない
かつては、国産の減少を輸入が補完してきましたが、その機能が弱まっています。
2025年の切り花輸入量は、国産が減り続けているにもかかわらず、推定で前年比1.2%増にとどまりました。
大きく伸びない理由は、円安や国際情勢だけではありません。
国内マーケットが縮小する中で、輸入を増やせば相場を下げ、自らの首を絞めることになる。
そう判断して、輸入業者が数量を抑えていると考えられます。
止まらない「市場縮小→生産減少」の負の連鎖
高齢化や後継者不足による自然減に加え、生産コストの高騰とマーケットの縮小による経営環境の悪化が、生産者減少に拍車をかけています。
温室・ハウス建設費の高騰で規模拡大が難しく、生産者が減った分だけ生産量が減ります。
2025年は市場単価が頭打ちとなり、経営環境はさらに厳しくなりました。
生産回復の兆しが見えないまま、1年が終わろうとしています。
「残された時間は20年」が現実味を帯びる

日本の切り花生産は、終戦の1945年にゼロから再出発しました(図)。
その後50年間、経済成長とともに急拡大し、1996年には58億本に到達。
「100億本も夢ではない」と沸き立っていました。
しかし、その後は上り坂と同じ速度で下り坂を下り続けています。
下り始めて30年が経過した2025年の推定生産量は27億本。
これは、上り坂20年目の1965年の26億本とほぼ同水準です。
いよいよ、国内切り花生産の消滅まで「残された時間は20年」という言葉が、現実味を帯びてきました。
下落速度を緩め、V字回復を目指す王道は、消費回復とマーケット拡大です。
しかし、それには時間がかかります。
まずは、下り落ちるのを止めるための「急ブレーキ」が必要です。
自己責任が原則の花産業は、国に頼ることはできません。
花産業が自らできる手段は、「合理的な価格形成」を目指す「食料システム法」に倣い、市場による買い支え、すなわち指値委託販売などによって適正価格を実現し、花農家の経営を改善することです。
それは花市場の決断にかかっています。
2026年は、まさに勝負の年になります。
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