(297)自由研究:冷蔵庫の中を「探検」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年9月2日
きっかけは小学生用のメディアからの問い合わせでした。最近よく聞く「代替肉」とは何でしょうか?という小学生からの素朴な疑問です。記者さんがわかりやすくまとめてくれた記事(「毎日小学生新聞」2022年8月29日)(注1)はこちらです。さて…。
日本語には「代用」と「代替」という似た言葉がある。「代用」は何かが足りない時に一時的に代りに使うことで、いずれ元に戻すことが前提として用いられる。「代替」はあるものや人などをそれと同様なものに継続して置き換えることだ。そうすると、「代替肉」とは本来の肉を、それと同様な何かと置き換えたものということになる。
内容的には、大豆などの植物から作る植物由来肉と、最先端技術を用いて動物細胞から動物の筋肉、つまり食肉として食べる部分だけを作り出す培養肉があることはよく知られている。培養肉は現在では多くの企業や研究者が取り組んでいるが、ステーキのような肉を本物の肉と同じ価格や品質で提供可能になるにはまだまだ乗り越えなければなりない多くの課題がある。そのため、普通にスーパーなどで買えるようになるのは、まだ時間がかかるであろう。
「代替肉」が注目された背景には、世界の人口が増え、食肉消費が増加し、将来、世界的なタンパク質不足が心配され、何とかこれを確保したいという考えがある。タンパク質摂取という視点に立てば昆虫食もその方法のひとつであり、昔から日本やアジア各国では行われていた。イナゴの佃煮などは今でも販売されているし、筆者も昔はよく食べたものだ。
一般に、人間が生きるためには1日あたり約50グラムのタンパク質が必要だと言われている。もともと欧米人はこれを食肉から、日本人は大豆などの豆類や魚などを中心に摂取していた。ところが、食生活が豊かになり、牛肉・豚肉・鶏肉など食肉の生産や消費が急激に増え、環境問題や動物愛護など、さまざまな問題が生じてきた。代替肉はこうした流れの中で登場したものと理解できる。
だが、よく考えてみると日本では「大豆ハンバーグ」や「豆腐ハンバーグ」など何十年も前から食べていたし、そもそも大豆は「畑の肉」とも呼ばれていた。納豆や豆腐、湯葉など、さまざまな形で食べられていたほど日本の食生活に馴染んでいる。
したがって、「代替肉」に対する感じ方は、欧米と日本では実は異なるということを理解しておくことも重要なポイントである。
さて、現在の日本ではコメ以外のほぼ全ての穀物や大豆などの多くの食品原材料を海外から輸入している。世界の動向や天候などが大きく変化すると、すぐに食料品の価格が変化するのもそのためだ。食品原材料となる穀物や大豆、食肉などの生産地での生育状況や、海上輸送運賃、そして為替相場(最近は円安のため輸入には多くの円が必要)なども影響する。
こうした中で、我々が毎日安心して食事をするためには、国内でもしっかりと大豆や小麦、そして家畜を育てていくことは基本的な食べ物を確保するという点で非常に重要であり、食料の自給という大きな問題につながる。
最後に、夏休みのやり残し自由研究のアイデアをひとつ紹介しておきたい。冷蔵庫の中をのぞき、肉や魚、お菓子などの原材料が何か、それはどこで作られたものか、ラベルを見て産地などを調べて見ることをおすすめしたい。伝統的な日本の食べ物と思っていたものが実は海外から輸入した原材料で作られていたというような発見が沢山あると思う。冷蔵庫の中を「探検」するだけで場合によっては世界旅行ができてしまうかもしれない。夜遅く、今から自由研究どうしよう...と親子で悩む方へのアドバイスである。
* *
先に寝てしまった子供の横で深夜に宿題の工作を手伝った昔の記憶、そしてはるか大昔に自分も親に工作を手伝ってもらった記憶がよみがえります。
(注1)「代替肉とはどういうものですか」、「毎日小学生新聞」、2022年8月29日、アドレスは、https://mainichi.jp/maisho/articles/20220829/kei/00s/00s/006000c
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