【浅野純次・読書の楽しみ】第78回2022年9月23日
◎小島美里『あなたはどこで死にたいですか?』(岩波書店、2310円)
ピンピンコロリで在宅ひとり死が理想だ、とお思いのあなた。いやいや、かく言う私だって両親を昔、在宅で看取り、自分もピンピンコロリと行きたいと思い続けています。
でもこの本の著者はそんなわけにはいかないとはっきりとおっしゃるのです。何しろ30年前に介助ボランティアグループを立ち上げ、以来、介護事業に一貫して関わってきた著者が言われることには強い説得力があります。
ではなぜそうは問屋が卸さないのか。それは多くの老年者が認知症を発症してしまい、そうなってしまっては、ひとり在宅生活など至難の業だからです。
本書はたくさんの事例(つまりたくさんの被介護老人の話)を紹介し、介護する側もされる側も想像を超える苦労や失敗を余儀なくされる様を生き生きと描いて、思わず引き込まれてしまいます。
最大の問題は介護保険がうまく利用できないことで、認知症には使い勝手がまことに悪いのです。それは厚労行政にも大いに責任があります。著者は問題点を鋭く追及するとともに、理想的だが現実的な提言をもって締めくくります。副題の「認知症でも自分らしく生きられる社会へ」が、読み終えた読者に温かく迫力をもって迫ってくるはず。多くの人に読んでほしい本です。
◎貴志俊彦『帝国日本のプロパガンダ』(中公新書、924円)
大日本帝国と呼ばれていた時代には国策へと国民を同調させるためのプロパガンダ(政治宣伝)が活発に行われました。「神国日本」だとか「撃ちてし止まむ」などというポスターが街中に貼られていたものです(後者は敵に撃ち勝つまで戦争を続けるぞ、という意味。念のため)。
本書は「戦争と宣伝」という視点から、日清戦争、日露戦争、第一次大戦、日中戦争、太平洋戦争という戦時下にどんなプロパガンダが行われ、国民が偏った戦争観をもって愛国の旗を振ったかを探ろうとしています。
類書は少なからずありますが、日清、日露までさかのぼるのは比較的珍しく、さらに日本の台湾統治下の霧社事件まで調べているのは貴重です。
太平洋戦争での「大本営発表」の度外れた虚構は今では広く知られていますが、指導部によるフェイクニュースはウクライナ戦争でのプーチン政権にも通じる話で、長い目でみると指導部はむしろ苦境に追い込まれるというのは古今東西の真実なのでしょう。
◎内野勝行ほか『究極の疲れない脳』(アチーブメント出版、1496円)
頭を使いすぎて脳が疲れる人はそうそうはいないはずですが、こういうタイトルの本が出版されるということは、なんだかだで脳が疲れる人が多いということなのでしょう。
考えようと思ってもはかばかしくない、いつの間にか違うことを考えている、そして何かモヤがかかったような気がする(これをブレインフォグと呼ぶのだとか)、要するに疲れというより働きが悪い状態をいうらしいのです。ではどうするか。
脳の使い方、脳の働きを良くする食事、脳を休ませる睡眠法。そんなことが説明されます。例えばビタミンB群、鉄分、DHAが働きを良くするとか、まったく運動をしないと脳は疲れるのだとか、あるいは眠くなる前に15分間の「計画仮眠」をとるとよいとか。
認知症予防のあれこれも参考になりそうです。認知症とは脳の炎症だそうで、旅行と料理は脳の老化防止に最高なのだとか。脳に良い食事を自分でつくれば一石二鳥ですね。
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