(318)4年生、離陸直前!【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年2月3日
この時期の大学は高校生には受験、在学生には期末試験ですが、卒業を控えた最終学年の学生さんには最後の仕上げ期間となり、結構多忙です。
大学によりスケジュールは異なるため、一概に言えないことはもちろんだが、筆者の勤務先の大学の学群(部)の4年生には、卒業論文の最終的な仕上げと最後の発表を控えた集中期間である。
3年生から4年生にかけて、通常の講義とは別に、研究室に所属する学生には一定の基礎的な分析スキルを少しずつ伝える。それを今までの授業と同じ感覚で受けていると、「流す」ことになり、後で本人が苦労する。当たり前のように聞いているだけでは、恐らく決して身につかない様々な細かい「技術」をゼミの中では伝えていても、それは実際に使用してみないと個々の違いを習得できないからだ。
市販されているテキストにはそれなりのまとめが記されており、通常の理解力を備えていれば数回読むだけで十分に理解できる。だが、現実はテキストの例題のように綺麗に整理されたものではなく、想定外の様々な要素を含む場面に直面した場合、その対応には、別の能力を必要とする。その代表的なものは、観察力と応用力である。
観察力は、いかに細かい差異を的確に見抜くかと言い換えても良い。いつから違いが生じたのか、どこが想定していた結果と異なるのか、どのように異なるのか、など、徹底的に追及することが知的作業のレベルを向上させる。このあたりは、一種の修練と呼び変えて良いかもしれない。
多くの大学生は、例えば、当初はヒアリング調査の結果をうまくまとめることに四苦八苦する。頑張ってまとめたとしても、相手からヒアリングした内容と自分が思い込んだ内容を一緒にした報告がなされる。したがって、教員の最初の仕事は、まとめられたヒアリング報告の中で、相手の発言と自分の考えを明確に分離させることだ。つまり、客観的事実と主観的感想の分離である。そこから先は長くなるので割愛する。
これに対し、応用力は一段上の次元での技術を必要とする。テキストには全く述べられていない要素が多数含まれる対象をどのようにして、習得したフレームワークや分析手法に落とし込むか、だからだ。
ここで考えることを放棄する学生は、どこかにまとまった綺麗なデータあるいは分析があるはずだと必死にネットを検索する。その結果、運よくそのものズバリの内容を記した先行研究を見つけられればまだ良いが、多くは途方に暮れる。仮にうまく見つかったとしても、それは民間の調査会社などが出している高額なレポートで手が出る代物ではない。
しかがって、ここから先は、集めた膨大かつそのままでは単なる文字や数字の羅列にすぎないデータを、いかにして分析可能な形に整理するか、要は操作可能な形にするかが問われる。ここは教員にとって卒論指導の一番の山場であり、興味深いところかもしれない。
この段階でしっかりとした議論をして捌き方が確定すれば、その後の学生達は自分で進むことができる。つまり自走可能になる訳だ。
実際には、捌いたデータをわかりやすい形にまとめ、それを分析した上で結果をまとめて文章化して考察を加え、さらに、その文章を日本語として通用するものに何度も推敲する...という流れが続く。だが、知的作業として最も面白いのは、収集はしてきたもののどう処理してよいか途方にくれた学生達と、それなりに議論をしながら捌き方を見出させるところかもしれない。
自走が始まると、教員の役割は最終締切をにらみながら、作業を「止めさせる」ことになる。それまでは「早くやれ!」と発破をかけていたものが、全く逆に「このあたりで止めろ」ということになる訳だ。毎年のことながら、この変化は面白い。
ここまでくれば、あとは指導教員の役割はほとんど終了である。まだ発表会が控えているため完全終了ではないが、今年も大きな山は越えたようだ。
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一度、火が付き、動き始めると学生パワーは凄いですね。短期間でラーニング・カーブが急上昇します。あとは最後の仕上げ...です。
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