ワイン歴史博物館のある町 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年2月18日
ローマの北130キロほど、ウンブリア州の小さな町、トルジャーノに大きなコレクションを持つワイン博物館があります。
同じ町に本拠を置くワインメーカーのルンガロッティがつくり、1975年に開館した博物館で、古代から現在までの色々な資料が集められています。
ワイン博物館の内部
大学で美術史を学んだマリアグラツィア・ルンガロッティ夫人が、家に伝わるワイン関係の彫刻や陶器、資料や道具などを修復して展示することを考え、トルジャーノの町の中心にある17世紀の建物を修復して博物館にしました。
ペルージャ大学や国立アーカイブなどが協力して実現した、しっかりとした博物館です。単にモノを展示するだけでなく、数千年前から現在に至るワイン造りの活動が紹介されています。
ルンガロッティ夫人は1987年に、博物館を維持しワインの歴史などの研究を続けるための財団を設立、現在は娘のテレサさんが館長を務めています。家族連れや小学生の見学などを歓迎し、ワインの歴史だけでなく正しい飲み方なども教えています。
館長のテレサさん
20ある展示室は紀元前3000年~ローマ時代の展示から始まります。トルジャーノは古代エトルスク人とウンブロ人の住む地区の境界にあるので、エトルスク専門の展示、民俗学そしてブドウの栽培、ワイン造りの歴史。そしてワイン入れ、薬の入れものと続きます。
ローマ時代のワインを運んだ壺
そして中世からルネッサンス、バロック、現在までの陶器が展示され、陶器の歴史とワインの歴史を合わせてみることが出来ます。
ルネッサンスから近代にかけての陶器には、神ではなくワイン樽に祈りをささげる人や酔っぱらった女性なども描かれており楽しめます。
また、バッカスやワイン、ブドウ園に関する版画がルネッサンス期のマンテニャからピカソまで600枚ほど展示されています。
昔のブドウ搾り機
続く現代美術のコレクションの中にはジャン・コクトーがデザインし、ヴェニスのガラス作家が制作したガラスのカップや、イタリアで活躍している日本人アーティスト、加納達則の作品もあります。
そして最後に文学、イコノロジー。政治、農業法、論文、暦の古文書が展示されています。
イタリアで活躍する彫刻家、加納達則の作品
エリダーノ・リベルティトルジャーノ町長は「ニューヨークタイムズに「ナンバーワン」と書かれたワイン歴史博物館はトルジャーノの誇りです。単に観光客を呼ぶだけでなく、芸術家のインスピレーションのもとにもなっています。町には博物館だけではなく、歴史的な城や塔、教会など見るものが多く、農業の中心地域でもあるので、近くにはアグリトゥーリズモなど素晴らしい場所が沢山あります。夏には夜間にワインを楽しむ「星空のもとでワインを」や、有名な画家たち作品で町を飾る催し、丘の尾根を通るワインの道に内外の現代彫刻家の作品の展示も行っています」と話していました。
イタリア人にとってワインは単なる飲み物ではなく、歴史であり、文化であり、哲学です。大銀行の役員だった友人は退職するとブドウ園を買ってワイン造りを始めました。多くのイタリア人の夢はブドウ園を持ち、ワインをつくることです。
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