(322)10年後の世界のコメ貿易【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年3月3日
10年後の世界のコメ貿易はどうなるか?不確実な将来をどう見通すか、それはそれで厳密な見方や手法がいくつもありますが、ここでは簡単に米国の見方を紹介します。
米国農務省の長期見通しによると、世界のコメ貿易は今後10年間で約850万トン増加するようだ。以前にも記したが、この数字は日本から見れば日本のコメの全生産量を上回る需要が世界で新たに創出されるということだ。
以下は、昨年10月に公表された米国農務省の長期見通しによる。見通し作成時点でのマクロ経済環境を大前提としているため、今後10年間にどのような想定外の事象が起こるかはもちろんわからない。専門家はその中の個別変動要素についての議論を実施するが、ここでは米国農務省の出した見通しの結果をそのまま活用する。
最初に見ておくべきは、繰り返しになるが10年間でどれだけコメの貿易が拡大するかである。結論は5,322万トンから6,176万トンと854万トン増加すると見られている。
次に、輸出を見よう。約850万トンの新規需要の約6割、約500万トンをインドが獲得すると見られている。インドは現在でも年間2,000万トン近くのコメを輸出する大国である。残念なことに日本ではその事実すら余り知られていない(別表)。
現在の輸出数量面だけで見れば、タイ(820万トン)や、ヴェトナム(720万トン)、パキスタン(470万トン)などが大量にコメを海外に輸出している。ただし、インド以外の国々の10年後の輸出数量の増加分はタイが93万トン増だけで、残りは微増に過ぎない。
現在のコメ輸出国は、既存の顧客(輸入国)を維持し、若干の増加をしていくのがせいぜいなのかもしれない。コメ輸出はそれだけ競争が厳しいということでもあろう。仮に新しい顧客を獲得できてもその数は極めて少ないということが想像できる。
それでもインドは、約500万トンを上乗せ可能なようだ。日本がコメ輸出を本当に考えるのであれば、まずはこの部分を徹底的に調べて参考にすべきであろう。実際、どうしてインドがそこまでコメを大量に世界に輸出できるのかを正確に答えられるわが国の農業関係者は、一部の専門家を除き非常に少ないのではないだろうか。競争相手の分析は最初の一歩である。
それでは850万トンはどのような国々が輸入するのか。これも輸出の絶対数量が大きい国・地域と、今後10年間で輸入が大きく増加する国・地域とはそれなりに関連はあるが、もう少し注意が必要である。
とくに「その他西アフリカ(ECOWAS)」諸国は、現在800万トン以上のコメを輸入しているが、10年後には1,000万トン以上を輸入するコメの大輸入地域となることが見込まれている。ECOWASとは、西アフリカ諸国経済共同体のことで、現在では15か国(ベナン、ブルキナファソ、カーボベルデ、コートジボアール、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ)で構成されている。これらの国々の名前を聞いて即座に場所が特定できる方はかなりのアフリカ通であろう。
このECOWAS各国の輸入量増加分は10年後には211万トン(ナイジェリアを含めれば合計で約300万トン)というのが米国の見立てである。その他は、中国、フィリピン、中東...といったところが100万トン水準の輸入増加が見込まれている。
さて、かなり粗い議論だが、人材を別とすれば、日本の最大の資源(リソース)は森林や海・水産物、農作物であれば最大生産量を誇るコメである。これを需要が大きく成長している国や地域にどう結び付けるか、これこそが将来に向けた知恵の出しどころであろう。とにかくあの手この手を考え、実践していく必要がある。こうした分野こそ、官・産・学が本当にまとまり時間と経営資源を投入すべきと思うことしきりである。
* *
自分の性格からして、20~30代であれば、直ぐにアフリカに飛んで行ったかもしれません。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(2)病理検査で家畜を守る 研究開発室 中村素直さん2025年9月17日
-
9月最需要期の生乳需給 北海道増産で混乱回避2025年9月17日
-
営農指導員 経営分析でスキルアップ JA上伊那【JA営農・経済フォーラム】(2)2025年9月17日
-
能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
-
【石破首相退陣に思う】しがらみ断ち切るには野党と協力を 日本維新の会 池畑浩太朗衆議院議員2025年9月17日
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
「第11回全国小学生一輪車大会」に協賛「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年9月17日
-
みやぎの新米販売開始セレモニー プレゼントキャンペーンも実施 JA全農みやぎ2025年9月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ダイニング札幌ステラプレイスで北海道産食材の料理を堪能 JAタウン2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
【消費者の目・花ちゃん】スマホ置く余裕を2025年9月17日
-
日越農業協力対話官民フォーラムに参加 農業環境研究所と覚書を締結 Green Carbon2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
【役員人事】マルトモ(10月1日付)2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
厄介な雑草に対処 栽培アシストAIに「雑草画像診断」追加 AgriweB2025年9月17日
-
「果房 メロンとロマン」秋の新作パフェ&デリパフェが登場 青森県つがる市2025年9月17日
-
木南晴夏セレクト冷凍パンも販売「パンフェス in ららぽーと横浜2025」に初出店 パンフォーユー2025年9月17日