シンとんぼ(37)スマート農業は役に立つのか?⑪2023年4月1日
シンとんぼは、現在、スマート農業が本当に役立つものなのかをテーマに検証するため、農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術を、まずは耕種農業に絞り、①GPSを利用した自動操舵・制御による農業機械、②農業用ドローン、③水管理システム、④自動草刈り機、⑤収穫機、⑥出荷調整機の6つに整理し、検証を進めている。
今回は、⑥出荷調整機である。
青果物は、ほとんどの場合収穫されたそのままの状態では出荷されず、外葉の除去や箱詰めなど、流通に乗せるために何らかの調整が必要になる。その出荷前調整内容は、作物によって工程数の多い少ないや手間のかかり具合などが異なるため、出荷調整に使用する機械は作物毎に開発しなければならない。現在でも、圧縮エアで外葉を吹き飛ばすだけの単純な構造の長ネギ皮むき機やダイコンの水洗い機など、出荷調整に使用される機械は一部で市販され、大いに役立っている。実は、農家の営農継続や規模拡大などの際に障害となる要因の一つが出荷前調整作業なのだ。この負担を軽くしてくれれば、もっと営農を続けたり、面積を増やしても良いという農家も多い。出荷前調整の労力を軽減する手段として、前述の機械の他、キュウリの収穫・調整作業請負やイチゴの集荷・パッキング施設の設置などがある。
この出荷調整作業をスマート農業化するとなると、前述のように作物毎に開発しなければならず、ある程度需要が見込めないと開発に着手できない。そうなると、栽培面積の多い水稲や、トマト・キュウリ・イチゴといった単価が高く流通量も多いものに開発が集中することになる。
ただ、この出荷調整作業にスマート化が必要かというと、いささか疑問がある。なぜなら、出荷調整作業って、青果物の流通システムに乗せるために行うもので、流通形態が変わってしまえば途端に以前の流通システムに合致した出荷調整機は無用の長物になってしまうからだ。例えば、トマトであれば、コンテナ等に収穫したものを、大きさ、色、収穫の際に見落とした傷の有無などをチェックし、定められた等級別に分けて箱詰めしていく。いわゆる選果という作業だが、色などはコンピューター管理の色選機や人間の目(匠の技)で仕訳けていく。この作業をスマート化しようと思えば、等級別にAIが判別する仕組みをつくり、サイズ毎にダンボールへの入数を分けて丁度よく傷つけないように箱詰めし、等級や生産者名など必要な情報を印字するということになる。この箱詰めのスマート化が難しく、出荷施設では人間による手詰めで行っていることの方が多い。このような難しい作業を苦労してスマート化し高い導入費用、維持費を払うよりも、農家が収穫したそのままの状態(コンテナ詰め)で流通できるようにした方がそれこそスマートじゃないか? とシンとんぼは思うのだがいかがだろうか。
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