(332)大学の附属施設と名称【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年5月19日
5月18日と19日、全国の大学附属農場の関係者が東京に集まりました。全国大学附属農場協議会の春季総会および2年に1度の教育シンポジウムです。コロナ禍の3年を経て、久しぶりの対面開催です。
文部科学省の大学設置基準第39条には、学部・学科に必要な教育研究施設が列記されている。
例えば、教員養成に関する学部学科であれば、「附属学校又は附属幼保連携型認定こども園」がそうだ。読者の中には自分の子供や孫を通じてご存じの方も多いとは思う。一方、そもそも「認定こども園」とは何?という方もいるのではないだろうか。
振り返れば今から20年近く前の2006年、「就学前のこどもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」という長い名称の法律が成立した。これは俗に「認定こども園法」と呼ばれる法律だ。
幼稚園は教育基本法、保育所は児童福祉法など、根拠法が異なることはある程度の年齢の方であれば何となく理解はしていると思う。正直に言えば筆者も「認定こども園法」については名前を聞いたことがある程度でよく知らなかった。現在の認定こども園には、幼稚園型、保育園型、幼保連携型、地方裁量型の4種類があるようだ。
話が長くなったが、医学部や歯学部には附属病院がある。これはわかりやすい。また、薬学に関する学部又は学科には薬用植物園(薬草園)がある。工学に関する学部には実験・実習工場がある。体育に関する学部又は学科には体育館がある。
さらに、言われてみれば当たり前だが、盲点なのは水産学又は商船に関する学部だ。この附属施設は練習船である。ちなみに水産増殖に関する学科となると、付属施設は養殖施設となる。
そして、農学に関する学部にある附属施設が農場だ。ただし、注意しなければならないのは林学に関する学科がある場合、演習林という附属施設が必要となる。また、獣医学に関する学部又は学科の場合には家畜病院、畜産学に関する学部又は学科の場合には飼育場又は牧場が附属施設として必要という点だ。
実は「大学設置基準」は、じっくり読むとかなり面白い。面白いと言うのは、よくぞここまで細かく定めてあるという意味である。先人の苦労の蓄積として読めば、その意図するところを各所に見る事ができる。ご関心ある方はじっくり目を通されてみると、「そうだったのか~!」ということがいろいろ発見できると思う。
さて、話を冒頭の大学附属農場に戻す。全国大学附属農場協議会は現在54大学がメンバーだが、その中で「○○大学〇〇学部附属農場」という伝統的な名称を今でも用いているのは20程度であろうか。近年は多くの大学で、フィールド科学センター、フィールド教育センター、あるいはフィールド科学教育センターのような名称に変化している。
この背景も法律的な説明を別にすれば、バイオテクノロジーのような生命科学技術の急速な進歩が大きい。例えば、植物の育種など従来はいわゆる農場で実施していたものが、内容によっては実験室(ラボ)で可能になったからだ。そうなると、ラボの中で実施する内容と、フィールド(農場)で実施する内容を形式的には区別しておく必要が生じる。
乳牛を例にとれば、放牧された乳牛の生態を観察することは主としてフィールドで実施するが、受精卵移植などはラボでということになる。
「農場」というと個々人がいろいろな印象を持ち、各々の経験や知識に基づいて想像を働かせる。だが、科学技術の進歩に伴い「農場」の内容や実際に行われている教育・研究の内容は、従来型の基幹となる部分と最先端技術が活用されている部分の両者がそれぞれ融合しているという点を理解しておく必要がある。
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春季大会は情勢交換とともに「総合知」という観点から様々な知見を共有する大会でした。
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