シンとんぼ(59)食の安全とは(17)2023年9月9日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。
「絶対的な安全」を証明するのはとても難しいが、「毒性の強弱を示す根拠」の検証のため、現在の安全の証明がどのようになされているのかを検証しており、無毒性量(no observed adverse effect level:NOAEL)を求めるために扱われるために使用されるデータにどんなものがあるかを掘り下げてみている。
今回は亜急性毒性試験と慢性毒性試験だ。急性毒性試験が短時間に体内に多量に物質が取り込まれた時の重篤な健康影響=致死作用を1回の投与で調べるものであったのに対し、亜急性毒性は、1週間から12か月以内の比較的短い期間連続して投与した時の毒性を調べる試験だ。連続投与期間が18か月以上の慢性毒性(後述)よりも期間が短い。一生涯という期間ではないが、長くて1年くらいで何らかの毒性症状が出ないかどうかを調べるためのものだ。
一般に実験動物の静脈に一定期間定期的に物質を投与し続け、行動観察や尿検査、血液検査、病理学的検査などを通じて、影響を調べる。1日に1回投与し続け、異常な症状などが出ていないか毎日観察する。病理学的検査などは、投与期間終了後に実施される。
以上の急性毒性に対し、長期間(いわゆる実験動物の一生涯)に渡って投与し続けて、実験動物の健康上の変化を調べる試験を慢性毒性試験という。生涯を終えた実験動物を解剖し、病理的な変化(発がん性、臓器障害など)を調べるものだ。
いずれの試験も、対照の物質をどの位の量を1度あるいは連続投与した場合の変化を確認し、実験動物の一生涯で何の影響も出ない物質の体重1kgあたりの量を探るものだ。実験動物からしてみれば、餌ではなく、得体のしれない物質を無理やり投与される迷惑な話である。そのため、動物愛護の観点から、急性毒性試験や亜急性毒性試験などの結果から明らかに影響の無いことが分かった場合などには、その後の試験が省略され、無駄に実験動物の命を奪わないようになっている。
とはいえ、1つの物質(農薬の成分等)の毒性を調べるために多数の実験動物の命が奪われるのに変わりはないことを十分に理解しておかなければならないだろう。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日