コメの市場があるメリットとは?その10 相場が定まらない新米価格【熊野孝文・米マーケット情報】2023年9月19日
先週金曜日に都内で米穀業者が集まり情報交換会と席上取引会が開催された。情報交換会では、高温障害で3等に格付けされた新潟コシヒカリのサンプルが持ち込まれ、参加者全員に回された中、北海道から東北、北陸、関東まで各主要産地の新米の出来具合や品位、価格情報が紹介された。価格情報では急激な高値になっている裾ものの価格がどこまで上がるのかに話題が集まったほか、秋田あきたこまちや宮城ひとめぼれなど東北の新米価格の相場に関心が集まったが、相場の値上がりが急で、水準がつかみづらくなっている。
席上取引会では取引前に情報交換会が行われることが決まりのようになっており、情報の集積の場としても市場の役割がある。
A社=「加工用米や飼料用米の扱いが多くなっているが、主食用では関東の早期米も扱っており、千葉の新米は他県に比べ品質が良い。ただし、農協系統は集まりが悪いようだ。新潟は1等に格付けされたものはなく2等、3等、規格外が主体。例年4%ぐらい網下が出るがこれも少ない。高温障害でシラタになったものが多く、すでにパックご飯メーカーと話し合っているのではないか」
B社=「北海道はゆめぴりかの収穫が始まったが、高タンパクでシラタが多い。ななつぼしは始まったばかりだが、主産地の空知などがどうなるのか関心を持っている。価格が高騰、高値を追う展開になっている。道産米に品位を求める動きが出て来るのではないか」
C社=「千葉の価格が影響してくず米はキロ110円でも手に入らないようになっている。これでは中米を最低でも1俵1万1000円にしないとやっていけない。埼玉も大手卸が値を釣り上げている。今のところ下がる材料はない」
D社=「埼玉はコシヒカリも彩のきずなも2等、3等が多いが新潟ほど悪くはない。未検でも庭先で1万2000円から1万2500円しており、検査玉はBランクで1万3000円、着値は1万3500円。これが当たり前。産地の打診価格は新潟コシヒカリが3等でも1万3600円、秋田あきたこまちは1万4500円、まっしぐらは1万3200円置場で持込み条件では関東コシヒカリより高い。白米卸としてはこのまま上がり続けることはないう希望的観測しかなく、まったく先が見えない」
E社=「業務用米の販売業者の中で新米の価格をいくら上げればよいのかが懸案事項になっているが、ほぼキロ30円で一斉に値上げ要請した。昨年は値上げ要請が通りづらかったが、今年は通り安い。岩手の新米を1車買ったが品位は凄くよかった。宮城も山形も水管理を上手くやった生産者は大豊作だと聞いている。生産者の技術によって違う。新潟は1等がないが、石川はゆめみずほで8割、コシヒカリで7割が1等だと聞いており、高温障害による品位劣化をそこまで心配していない」
F社=「千葉はコシヒカリの収穫も終わったが、ぼやけたコシヒカリが1等に格付けされていて見面が悪い。くず米を事前契約したが、ノンデリを食らって高く買って安く売っているので何をやっているのかわからない。業務用米もキロ30円の値上げでは追っつかない。相当な値上げ要請をしなくてはならないのだが、なぜか精米だけは上げてはいけない雰囲気がある」
J社=「千葉も茨城も売って来ない。新潟も小出しになっている。裾ものの値上がりが急激で外米にも問い合わせが来るようになっている。23年産はアメリカも水不足が緩和して作付けが増えたので円高になるとチャンスはある。9月29日のSBSでは落としに行かなくてはいけない。オーストラリア枠もキロ190円で落札、調整してキロ210円程度で売れるようになるだろう」
H社=「原料玄米がどこの産地も値上がりしているので恐ろしくてしょうがない。中米で1万2000円などと言われると、白米の価格交渉のスタート時点ですでに失敗していることになる。これだけで上に500円のブレたことになる。販売計画の立て直しが必要」
I社=「人手不足で生産者を回っての集荷が出来なくなったので、自社まで持ち込んでもらうようにしている。新米のハシリは品位が良くなかったがここに来て1等ゾロのコメが来るようになった。インボイスでは二重に消費税を払わないように気を付けているが、その分事務作業が大変」
こうした情報が紹介された情報交換会の後、席上取引会に映ったが、集荷最盛期とあって産地の集荷業者の出席が少なく、場立ちが電話で集荷業者に売り玉を出すように働きかけたが相場が上げ基調で落ち着かないこともあって売り物が出なかった。唯一の成約は年内渡し条件でゆめぴりかが関東着1万4900円。
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