(351)金額で見る農林水産物輸入【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年9月29日
現代日本の穀物輸入の中心がトウモロコシであることはよく知られています。2022年の輸入数量は1,527万トンです。数量はよく言われますが、金額は意外と見逃しがちです。
少し全体の話をしたい。わが国の農林水産物の輸入額は2022年の数字で見ると約13兆4,180億円である。農林水産物と一言で言うが、内容は農産物、林産物、水産物に分かれる。同様に農林水産物の輸出金額は1兆3,372億円である。こうして数字を見ると、大きな差があることに驚かれる方も多いであろう。農林水産物の貿易収支(輸出と輸入の差)で言えば、約12兆808億円の輸入超過ということになる。
さて、今回は輸入に焦点を当ててみたい。約13兆円の輸入の内訳は、農産物約9兆円、林産物と水産物が各々約2兆円である。言うまでもなく輸入は貿易取引の結果であり、貿易取引には外国為替、つまり為替レートの変動が関係するため、単純に円貨の総額だけで話をすすめるのは不十分である。
ただ、農林水産物の輸入金額や、その内訳を金額面でも頭に入れておくことは、昨今、急速に関心が集まりつつある食料安全保障の議論における最も基本的な知識のひとつとして不可欠であろう。どの観点から安全保障を語るかにより求めるものが異なるからだ。
次に、品目別の輸入実績を金額で見てみよう。良い機会なので、少し長くなるが順位とともに金額を列記する。現代日本がどのような農林水産物にどれだけの金額をかけているかをじっくりと考えながら見ると興味深いと思う。違う景色が見えるはずだ。
第1位がトウモロコシ(7,645億円)である。次はたばこ(6,231億円)である。以下、豚肉(5,536億円)、牛肉(4,925億円)、製材(3,905億円)、生鮮・乾燥果実(3,846億円)、アルコール飲料(3,646億円)と続く。この後が大豆(3,391億円)、小麦(3,298億円)、鶏肉調整品(3,249億円)、木材チップ(3,005億円)、そして冷凍野菜(2,823億円)である。そして、さけ・ます(2,783億円)、菜種(2,569億円)、かつお・まぐろ類(2,317億円)、えび(2,213億円)、コーヒー豆(2,151億円)、鶏肉(2,026億円)と続いている。
現代日本はたばこの輸入に実に多くの金額を費やしている。言い方を換えれば、豚肉や牛肉よりもたばこという訳だ。たばこ輸入の相手先を見ると、イタリアが26.3%、韓国20.6%、ギリシャ13.0%、セルビア10.9%などが大きい。オフィスや公共の場での禁煙が一般化してかなり時間が経過しているが、嗜好品需要がいかに根強いかがわかる。
製材も面白い。日本は森林大国ではなかったか...、と年配者は思うかもしれないが、ホームセンターで本棚やボックスを購入すると多くの合板は外国産である。ちなみに製材輸入の相手先はカナダ(23.5%)、スウェーデン(16.1%)、フィンランド(15.0%)などが大きい。北欧の家具などが日本でも普通に入手できるようになったわけだ。
食に関する点でもう少し追加しておくと、鶏肉調整品はタイ(64.0%)、中国(34.8%)だが、鶏肉はブラジル(69.4%)、タイ(28.7%)であることに注意する必要がある。厳密な定義は省くが、前者はチキンナゲット、焼き鳥、から揚げなど、後者はそのものと考えればイメージがつかみやすいと思う。スーパーマーケットで購入する際は、どこから来たものかを確認すれば現代の食、言い換えればグローバル・フードシステムの一端を見ることができる。
それにしても、日本で育て加工するより、北欧や南米で育て、加工し、輸送したものが普通に入手できる便利さにいつのまにか依存していることの意味をよく考える必要があるかもしれない。安くて良いものが長期にわたり入手可能になると、いつのまにか自ら手間をかけて作ることを忘れてしまう。実際、その必要がなかったのかもしれない。
ただしそれは、信頼関係に基づく長期安定取引が継続している限りのことである。一旦、その関係がおかしくなった場合、自ら何とかできるように可能な限り準備しておく、その姿勢は、家庭、企業、国家、いずれも同じなのではないだろうか。
* *
まだまだ暑い日が続きます。くれぐれもご自愛下さい。
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