【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】日本で最初に飢えるのは東京(大都市圏)2023年10月12日
「世界で最初に飢えるのは日本」という本のタイトルが衝撃を与えたが、「日本で最初に飢えるのは東京」などの大都市圏だということも忘れてはならない。
高まるリスク
ロシアがウクライナの穀物積出港の攻撃を7月から再開し、インドは世界の輸出の4割を占めるコメの輸出の多くを7月から停止し、紛争に備えて中国は人口14億人が1年半食べられるだけの穀物を備蓄するために買い占めているという(一方、日本の穀物備蓄能力は1.5~2カ月だ。この点でもまったく危機への備えに雲泥の差がある)。さらに、イスラエル・パレスチナ紛争も勃発した。国際情勢はさらに悪化している。
海外から食料や生産資材の輸入が滞りつつある危機が増幅している今、飼料に加えて、種と肥料も考慮して、直近の農水省データから実質的自給率を試算すると、2022年の日本の食料自給率(カロリーベース)は37.6%だが、これに肥料の輸入が止まって収量が半分になることを想定すると22%まで落ちる。同じく、コメなどの種も9割が海外依存になるという最悪の事態を仮定すると、種が止まると9.2%だ。
主産地の重要性と都市農業の重要性
「いや、自給率223%の北海道などが頑張ってくれていれば、都市部の消費者も大丈夫だ」と呑気なことを考えていたら大変である。前々回のコラムで述べたように、今年は「日本の台所」北海道も猛暑で、様々な農畜産物が減産した。こうした気象災害の頻度は高まっている。
海外からの物流が滞るリスクが高まっている中、頼りの主産地が、コスト高で苦しみ、気象災害のダブルパンチで減産すれば、まず、最初に食べられなくなるのは都市圏の消費者である。終戦後の「買い出し」を経験した方は少ないだろうが、よく思い出す必要がある。
こうしたことを理解するために、ある県知事さんが、図のような計算を示してくれた。食料を供給できる力があることが人間の生きる源であるから、その力をもっと評価して、国会議員の定数配分も見直してはどうか、という試算である。
なんと、東京は1人(現在の自給率だと0)、大阪も1で、北海道が60人くらいになる。これは少し極端としても、こうした試算の意味することは重大である。特に、都市部の皆さんは、「農業問題は消費者問題」であることを噛みしめて、自分達の命を守ってくれている人々への感謝と支え合う行動がもっと必要である。
そうした意味では、都市部の農業の重要性ももっと認識されなくてはならない。東京や大阪でも頑張ってくれている農家さんが沢山いる。その農家さんとともに支え合い、さらに都市部で安全で美味しい食料を増産していく消費者と生産者との一体的な取り組みも強化したい。
"「人体の在る所には人体を作り上げる食糧がその付近にあること」を原則とすべきである。しかして、「農業の姿を都市にも及ぼせ」が私の主張である。" と、GHQにより焚書になった『食糧戰爭』(新大衆社 / 昭和19年)の著者、丸本彰造氏が同書の中で述べた意味も噛みしめたい。
重要な記事
最新の記事
-
令和6年春の叙勲 5人が受章(農水省関係)2024年4月29日
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日