地域住民から『愛されキャラ』のJA組織へ変身しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年10月17日
政府との苦しい戦いで見えたJA組織の弱点

いまから9年ほど前、いまは亡き当時の安倍首相が、農協組織に向けて宣戦布告。2014年末の衆院選での勝利を受けて、「農協の抜本改革の断行」を宣言した。当時、TPPに反対するJAグループに対して、きわめて感情的な姿勢を感じたものだ。
政府は、農業再生を旗印とした農業改革を大目的に、①農業者の所得拡大、②農業生産の拡大、③地域活性化の3つの目的を掲げたが、狙いは明らかにJA潰しだ。政府は規制改革会議とともに、JA全中などの全国組織の組織改革とJAの准組合員問題などを中心にした実効性、結果が見えるJA改革を求め、攻めたてた。
結局、JAグループは全面的に抵抗する方針を転換、改革案を受け入れる。そして、結果的には、JA全中の組織改革など、大きな痛手を負いながら、苦渋の選択を強いられ、個々のJAにとっても厳しい自己改革計画、目標達成に向けた具体的な取組み、敗北感は強かったようだ。
私も、当時、いくつかのコンサル先JAで、対応策や計画づくりをお手伝いしたが、JAの常勤役員も幹部職員も頭を抱えていた。JAの事業や組織活動がどのように評価されるか、この先、JAグループ全体の行方はどうなるのか。役職員の多くは、「胃が痛い」、「毎日、寝不足」などと訴え、大きな不安を口にしていたものだ。
そして現在、あれほどの苦痛と緊張の連続を経験してきたのに、現況はどうなっているか。緊張感がなく、危機感をもって、必死に次なる課題に取り組む姿が見えないように思うが、どうだろうか。そもそも、あの政府との攻防で何が見えたのか。JAグループの最大の弱点が見え、やるべき課題が明らかになったのではないかと思うが・・・。
ところで、政府が、執拗にJAグループを責め続けられたのはなぜか。JAグループの弱点が明らかだったからだ。それは、JAグループへの応援団の存在の薄さである。地域社会のなかで、80年近くも事業や組織活動をしてきて、「地域にとってJAは欠かせない!」、「JAがなければ、安心・安全な食生活ができなくなる!」、「地域の農業を守るためにも、地域の文化を守るためにもJAは必要!」といった声は聞こえただろうか。
地域のみなさんのJAの好感度アップに全力をあげよう!
次の時代に向けた準備と戦略を、過去のJAの取組みこだわらず、提起し、実践していかなければいけない。現在は、平成の時代の延長線上で、事業戦略を踏襲し、経営的な数値目標への取組みに汲々としている印象である。だが、旧態依然とした組織体制とはいえ、何とか統制がとれ、予定の目標数値の達成は可能な組織の状況にあるように思う。
したがって、今後のJAにとって、直ちに取り組むべきは、地域社会から必要とされる組織をめざし、同時に、なくてはならない存在価値を高めること。そのためにも、JAという組織の認知、理解を広くかつ深めてもらうための戦略とロードマップの作成を通じ、着実に、地域の多くの生活者から"必要とされる事業や活動の実践"を行うことではないか。内向きの組織を、外向きに解放し、大転換を図る超長期の戦いである。
実は、この取組みは、JAの隠れた大問題への対応策でもある。というのは、JAの組合員であって、年間を通じてまったくJAの施設を利用しない4割前後の組合員を呼び戻す効果も期待できるのである。過去に、私は特定のJA組合員をターゲットにし、事業実績に結びつけた"未利用組合員堀り起こし"に取り組み、一定の成果をあげた。
ところで、その大転換のロードマップは、全役職員で取り組み、歩みを止めない千変万化への取り組みである。その第一は、「地域社会から愛され、好感度なJAをつくること」である。堅い文章で説明される綱領、原則、JAの組織や事業の説明文章、組合員加入手続きの書類の数々、これで、多くの人はうんざりするというものを全面見直しする。対外向けのコピー、チラシ、看板、建物ペイント、あらゆる書類、職員の衣装や車などのペイントなど、確実に変化させ、新生JAをアピールするのだ。
夢物語のような話だと思う読者もいようが、そのくらいの意識と行動転換が必要ではないか。
そこで、第一のターゲットは、地域のみなさんの身近に存在する農産物直売所やファーマーズマーケット。
開業オープンしてから、何年も工夫や変化のない店づくりを大改装し、子供の遊び場所や家族が楽しむコーナーの創設、生産者農家とのつながる縁者づくり、地元の農業生産や食文化を学ぶカルチャールームなど。
地域社会から愛されたい、好感度な組織に変身しようという強い思いを体現したい。JA職員も仕事として働くのではなく、何のために、何を実現するための働き方をするか、を考え、行動するのである。
職員は農家のセールスマン、直売所・ファーマーズマーケットも大改革を
ところで、私たちの日常的な消費行動を考えると、たとえば、食品や飲料、日用品など、どこの店舗に出かけるか、消費者個々がそれぞれ決めているが、その決定要因は店舗の好き嫌いで、優先度の高い店舗を利用する。この好き嫌いが「企業好感度」である。
消費者の購買行動に直結する指標ともいわれる「企業好感度」は、サービス企業がもっとも重要視する数値。民間の放送局を中心に1971年から調査を行っている「データバンク定例全国調査」は、日本人になじみのある企業・ブランドについて、「好感を持っている」と回答した割合を「好感度」とし、上位300社を発表している。
最新調査では、1位がセブン-イレブン(41.1%)、2位が無印良品(40.6%)、3位がトヨタ自動車(34.4%)、以下、日本マクドナルド(32.0%)、ユニクロ(32.0%)と続き、ここまでは、前年度調査結果と変わらない。ちなみに、生協133位、JA172位である。
全農は上位300社以内を外している。
職員ばかりか組合員を巻き込み、新たな実践プロジェクトに取り組むべきは、「内向きの事業や経営のための行動や働き」ではなく、「外向きの愛されキャラの組織」をめざすこと。一般住民との接点である農産物直売所やファーマーズマーケットは、最大の変革ポイントである。
JAの全役職員は、直売所やファーマーズマーケットに出荷するすべての農家のセールスマンであり、店舗はJA事業のコンビニエンスストアである。
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