「評価が高い管理職」をロールモデルに職員・職場改革しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年10月24日
居酒屋の話題にも「理想的な管理職」が登場する

秋が深まるこの頃、駅前の居酒屋に顔を出すと、元気なサラリーマンたちが一日の仕事の反省やら同僚のおかしな行動、理解不能な上司の指示など、口角泡を飛ばして話を闘わせている。話題には事欠かないらしく、ノンストップで楽しい時間のようだ。
こんな場面で、常に笑い話として登場するのは、ダメな管理職だが、褒めたり、評価できる上司や管理職も登場する。
JAにも、部下の職員から評価されている管理職は少なくない。職員と一緒に食事をしていると、真面目に評価できる上司や管理職の話を耳にする。部下から評価され、組織の上部からも評価の高い職員は、私のコンサルや調査の後で、きっと管理職になったと思う。
実は、こうした話を単なる居酒屋での笑い話で終わらせないで、組織(職員・職場など)の品質の向上や個々の職員の能力アップに活用する方法があることをご存じだろうか。一般には、「ロールモデル」として実践されている。
このロールモデルとは、特定の管理職や特筆する職員について、普段の行動から学び、それを活かし、彼らの行動を模倣する対象として、実行動で活かしていくことだ。それは、一人の管理職とかというのではない。対象となるロールモデルは、何人でもいいし、役職でなくても良いのである。
ロールモデルは、管理職に限らず、窓口での応対が素晴らしい女子職員、農家から圧倒的に信頼の高い営農指導員など、年齢や経験にとらわれずに、モデル化することも可能である。
ロール(role)とは「役割・役目」といった意味であり、モデル(model)は「見本」「手本」という意味で、組織内において「この人のここは素晴らしい」と感じたことを学び実践することで、職場や組織を変革していく、という取組みのこと。コストをかけずに、組織の変革を進めていくという点で、お薦めの職場改革の方法である。ちなみに、このロールモデルの実践法は、80年ほど前にアメリカの社会学者の定義による。
ロールモデルになる人は、どんな特徴やスキルを持つのか
実は、8年ほど前、複数のJAにおいて、このロールモデルを活用して、職員の教育研修、自己変革プログラムづくり、目標とする管理職の模倣シートづくりなどに取り組んだ経緯がある。その事例を紹介しよう。この種の取組みは、外部組織に主導してもらう方が良さそうだ。
私が取り組んだロールモデルは、一部の管理職のみなさんに不快を感じさせる危惧があるので、取組み内容の詳細を常勤役員に示し、事前に了解を得ている。というのは、モデルとなる管理職を選ぶ過程で、選ばれない管理職が存在するからで、反発する人もいるし、素直に反省、自省する管理職もおられると思うが。
方法は、20歳代後半から30歳代の職員に対し、入職以来、自分自身の上司だった人や理想的な管理職だと思う人を3人挙げてください、とお願いする。その際の一般的な選択・判断基準を、私が作成した文章を参考にしてもらう。部下から評価される上司や管理職のタイプや行動様式、ビジネス書やマネジメント書などから作成している。
①コミュニケーション能力が高い。部下でも対等な関係で話を聞く、指示や指導よりも考えさせることを優先する。相談を重視する。
② 業務・実務面で優れた知識やスキルを持ち、日常の行動が模範的で、周囲の職員は実践行動から学び教えられる。
③ あらゆる場面において、公平・公正に判断する姿勢が明確である。
④ 事業や組織活動のそれぞれの場面において、決断力、判断力に優れている。
⑤ 部下の失敗に寛大で、フォロー、面倒見が良い。
一つのJAでは、約120名の管理職のなかから、若手・中堅職員が選んだ管理職は35名、そのなかから、10名の管理職に絞り込む。そこで、この10名の管理職に対して、若手・中堅職員でチームを編成して、10名の徹底インタビューを実施する。
定型質問は、座右の銘、好きな作家、感動した本、自分に影響を与えた人、自分の変革を促した機会(組合員や先輩職員との出会い、具体的な研修など)、これから学びたいこと、休日の過ごし方、家族との時間、組合員の声を聞く機会などを、どんな方法を利用しているか、など。
もちろん、日常生活において、起床時間、朝の日課(新聞・テレビ番組など)、好きな朝食、酒などの嗜好品、趣味などを尋ね、それらを各チームでレポート作成する。そこから、個人的に何を受け入れ、何を職場に活かし、何を広く活用するか、を論じるのである。
これまでに実施した事例から、若手・中堅職員が気づかされたことは、論理的な思考、さまざまな数値化とその分析、さらに、事業やマーケティングに関しての効率的な学習法、実践法などをあげ、共同学習を行っている。加えて、計画的な取組み、時間の効率的な活用などを自分たちのなかで、どのように活かすか、実際の行動に具体的に活かすか、を考え提案する。
この取組みは、継続し、管理職だけでなく、子育て中の女性職員や男性職員、評価の高い店舗の職員など、広げていくことで、「師弟関係」が代わったり、学ぶ視点が広がりをもち、JA組織全体が活力を手に入れることができる、そんな時間を感じた、あるJAのロールモデルの実践であった。
やり方や弊害などを難しく考えず、やれるところから始めることである。
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