オランダをモデルに再編大型化した花の卸売市場【花づくりの現場から 宇田明】第31回2024年3月21日
戦後ゼロから再出発した花の生産は、高度経済成長に加えて1970年代からの米からの転作で急拡大。
急増する花をスムーズに流通させるために、オランダをモデルに花の卸売市場は再編大型化されてきました。
卸売市場は、「卸売市場法」に基づく許認可業種。
卸売市場法の前身は、米騒動による治安対策、物価鎮静を目的に1923年に制定された「中央卸売市場法」。
対象は、食料である野菜、果実、魚類、肉類。
この大正時代の法律が、1971年に「卸売市場法」に改正され、「一般消費者の日常生活に密接な関係を有する食料品以外の農畜水産物」として花が加えられました。
花が卸売市場法の対象になっても、昭和の時代は従来からの小規模な地方卸売市場のまま。
それでは急増する花をスムーズに流通させるのが難しい。
もともと花は、青果物とちがい少量多品目であり、個人出荷が多く、系統出荷が少ない。
また購入者は、仲卸の割合が東京であっても25%ほどしかなく、ほとんどは個人経営の花屋であるため、上場単位が小さい。
したがって、流通には多くの人手と手間と時間がかかり、効率が悪い。
そのため、拡大する生産に対応するためには、卸売市場の再編大型化による効率的な流通と中央卸売市場化が必須でした。
再編市場のモデルとしたのが、世界一の規模を誇るオランダのアールスメール花市場。
すなわち、自動せり機、バケット流通、台車輸送、低温輸送などです。
自動せり機によるせりを、わが国では従来の手ぜりに対して機械ぜりとよんでいます。
機械ぜりを導入した再編市場の第1号は、1990年に東京都中央卸売市場として開場した大田市場花き部(卸売業者として大田花き、フラワーオークションジャパンが入場)。
その後、板橋市場、葛西市場が開設され、2001年の世田谷市場で東京都の再編と中央卸売市場への転換は一応完了。
その後、大阪、名古屋などの大都市市場もオランダ式に再編大型化されました。
機械ぜりは、写真のようなせり時計と呼ばれる電光表示板に情報が流れ、せり人が示す品物を見ながらせりがおこなわれます。
せりのスタートと同時にせり時計が、高値から下げていくせり下げ方式が主流です。
買い手は、表示板の中の半円形で示される値段の下がる動きを見て、ほしい値段の時、手元の操作盤のボタンを押し、早く押した応札者が落札します。
いわばゲーム感覚のせり。
上場口数と応札者がどんなに多くても、瞬時に値段と落札者が決まるスピーディーなせり。
当初は、パソコンやゲーム機に不慣れなベテランの花屋にはとまどいがありましたが、すぐに順応できました。
機械ぜりは、手ぜりと違い無機的に落札できる公平で信頼性が高い取引で、買参人に好評です。
このように、機械ぜりで、短時間に大量の花を正確に売買することが可能になりました。
オランダをモデルに再編大型化した花市場は、手ぜりの青果市場に比べると、デジタル化がすすみ近代的に見えますが、実体は零細でぜい弱な経営体質のままです。
花の卸売市場の年間取引高は3,600億円(2022年)で、青果市場の1/8しかありません。
花の最大の卸売業者、機械ぜりの大田花きの取引高はやっと300億円、青果1位の東京青果は手ぜりでアナログですが2,300億円です。
花市場の手数料は9.5%(現在は卸売市場法が改正され自由化)で、青果市場の8.5%よりは高いものの、オランダモデルの設備投資が大きな負担になっています。
花の卸売市場にはまだまだ業務改善が必要です。
花は「つくってなんぼではなく売ってなんぼ」ですから、卸売市場の経営体力の強化が生産振興に直結します。
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