(376)卒業式、さて大きくなったら...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年3月22日
将来、どのようなことをやりたいか、それは年齢とともに変化するのが大半ではないでしょうか。今日は卒業式でしたが、学生達を見ながらいろいろと考えていました。
勤務先の大学では3月19日に卒業式(正式には卒業証書・学位記授与式)が実施された。仙台では前日の暴風が嘘のように止まり、少し肌寒さが残るものの落ち着いた形で式典を迎えられたのは何よりである。
さて、大昔、1956年に定められた大学設置基準では大学を卒業した者は学士という「称号」を取得することができた。少し調べて見ると、当時は29種類の学士が認められていたようだ。ちなみに筆者の古い卒業証書には「文学士」と記載されている。
1991年の制度改正により、称号としての学士は学位という名称に変更になり、呼び方も変わった。先の「文学士」は「学士(文学)」とカッコ書きでの表記になり、カッコの中は基本的に各大学の自由になった。そのため、(○○学)の種類は今では非常に多岐にわたる。
ところで、幼稚園の頃、一緒に遊んだ友達の何人かが将来は電車やバスの運転手、あるいはプロ野球の選手などになりたいと言っていた。当時は野球が圧倒的人気であり、サッカーはまだ超少数派の時代である。
中学から高校になると各自の関心がかなり分かれてくる。筆者自身も医学や生物学に関心を持った時もあれば、歴史や外国の生活などに夢中になった時もある。正直に言えば「大きくなったら...」などほぼ考えないままに毎日を過ごしていた気がする。
今年の卒業生は新型コロナウイルス感染症の最盛期に大学生活を送った世代である。感染防止のため合格した大学の入学式すら行われないケースが多く、入学後はいきなりオンライン授業が続き、友達作りはおろか雑談すら制限された時期を大学生活の最初から強いられた学生達だ。もちろん学生達の責任ではない。
重要な点は、一番多感な時期であるにもかかわらず感染防止を理由に他者との直接的なコミュニケーションを強制的に大きく制限された世代が存在する事実、これを社会が今後、長きにわたり覚えておくことだ。
先日、ある学生が入学当初の話をしてくれた。「ディスプレイの向こうに同級生らしき顔は沢山見えるけど、授業が終われば『ブチッ!』と消えて終わり...こんな毎日ばかりだった」というものだ。求めるスキルや知識が限定されている試験対策や、一旦確立した人間関係をもとにしたオンラインでのやりとりであれば何とかなるだろう。
だが、日常生活のあれこれや将来の夢を話す友人たちを見つける場としては、やはり当時のオンライン授業では限界があったことを、ようやく当事者の学生達も落ち着いて話せるようになったのかもしれない。この点はコロナの3年間を中学あるいは高校で過ごした世代も同様であろう。
幸いなことに昨年5月以降、5類への移行とともに多くの制限が無くなり、本当に少しずつだが、大学内の活動も以前の空気と活気が戻ってきた。
話を卒業式に戻す。コロナを乗り越えて卒業式を迎えた学生達の将来の夢はどのようなものか、機会があれば是非一人ひとりにじっくり聞いてみたい。
そういえば、15年前に卒業した学生が社会人となり、仕事をしながら複数の論文を書き、今日の卒業式で博士(食産業学)の学位を取得した。嬉しい限りである。式典の合間に雑談した際、45歳くらいの頃の我々を覚えていると言われ、ふと思ったのは今日卒業する多くの学生達は当時小学校に入学くらいか...ということだ。あと20年たてばあなたが今の我々くらいの年齢になるよとお互いに笑い合った。
* *
夕方、事情により式典に出席できなかった社会人院生が挨拶に来てくれました。こちらも仕事と両立しつつ、しっかりと修士(食産業学)を取得したパワーある方です。今日は素直に嬉しいですね。
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