【JCA週報】 2010年のJAが危ない、将来方向は#1 (坂野百合勝)(2002)2024年4月8日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長山野徹JA全中代表理事会長、副会長土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、当機構の前身である協同組合経営研究所が発行した「協同組合経営研究月報」2002年7月号に、坂野百合勝氏が執筆された「2010年のJAが危ない、将来方向は」です。
ボリュームの関係から複数回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。
2010年のJAが危ない、将来方向は#1/全7回 (2002)
坂野百合勝(全国農協役職員共済会・常務理事)(当時)
(連載 21世紀における協同組合の意義と課題 第2回)
はじめに (#1)
10年後のJAが危ないー経営基盤を揺るがす世代交替一
1.右肩下がりの環境下で経営力低下 (#1)
2.世代交替がもたらす深刻な影響 (#2)
3.経営基盤を揺るがす資本力の低下 (#3)
4.伸び率低下の事業伸長率 (#4)
5.進む正組合員の勢力縮小 (#4)
6.組合員の参加・参加力の低下 (#5)
7.次々に発生する不良資産 (#5)
8.高コストで競争力低下 (#5)
10年後も活力ある組織で発展し続けるために (#6)
JAの将来像と課題 (#7)
はじめに
わが国の協同組合も,かつて破綻に追い込まれて閉業したり,身売りをしていった西欧の消費者協同組合を時間差で後追いしながら,轍を踏みそうな事態に陥っている。
この芽は既に40年前からあったのであり,やっばり「おまえもか」ということである。一部の卓越した先見性をもった識者には,当時から,今日直面している状況予測はされていた。筆者も警告を発していたのであるが,高度経済成長はイケイケドンドンで,黄色信号の警告に耳も貸さずに右肩上がりの環境下で,ひたすら時流に乗って突き進んできた。
その結果事業パイは飛躍的に大きくふくらましたものの,株式会社なのか協同組合なのか,区別がつかないような協同組合も出現して,今日,協同組合の存在価値が問われるような状況が出てきている。
過去の延長線上で推移すると,10年後のわが国の協同組合(JA,生協,漁協,信用組合,信用金庫)はいかような姿になっているのであろうか。本稿は,JAを事例として取り上げてその姿を予測し,JAが協同組合らしい姿で存続し続けるための対策について考察することとする。
10年後のJAが危ない
ー経営基盤を揺るがす世代交替一
1.右肩下がりの環境下で経営力低下
JAが経営体として発展し続けるためには,①資本力,②事業伸長力,③勢力拡大力,④組合員力,⑤不良債権処理力,⑥生産性力,などの経営指標が右肩上がりで維持できることが欠かせない条件となるが,いずれの指標も右肩下がりのJA,連合会が多くなっている。これらの経営指標改善のために組織改革の名のもとに,専らコストカットを進めているが,その先がどうなるのか展望が見い出せないでいる。
組織改革も協同組合ならではの独自の方式で行われているわけでもなく,一般企業で行われている合理化策の手法を導入して行っているのであり,スクラップ後のビルドに協同組合,またJAならではの方式が確立されて,独自性による強さを加えて再生スタートがなされているかといえば,そうではないケースが多い。
タコが自分の足を食って生き延びている状態と変わらず,先細りの縮小均衡経営路線に入り込んでいる。
単年度収支で赤字を出さない経営をすることは極めて重要なことではあるが,このことのみにとらわれて中・長期の視点を欠いた経営をしていけば,対症療法的その場限りの改革処理策に終始することになりかねず,ビジョンなき経営に落ち込んでしまいかねない。
JAを取り巻く環境が変われば,組合員の営農と生活を取り巻く情勢も変化し,当然にニーズも変わってくる。組織の主人公である組合員のJAに期待する内容が変われば,JAが取り組んでいく事業活動の内容を変えなければならない。
組合員のニーズが変わってもJAの事業活動の内容を変えないというのでは,組合員のためのJAということにはならないのであるが,現実にはこの環境変化に対する対応が的確に行われていないことが多く,組合員の離反現象を引き起こす原因ともなっている。JAの組織構造の的確な現状分析と将来予測をしておかなければ,JA経営を永続的に発展させ続けるために必要な,資本力,事業伸長力,勢力拡大力・・等の経営力指標の体力を維持していくことは困難である。
(続く)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】シロイチモジヨトウ 全道で多発に注意 北海道2025年8月25日
-
【JAの安心・安全な24年産米調査】25年産主食用 作付増加傾向(1)2025年8月25日
-
【JAの安心・安全な24年産米調査】25年産 飼料用米の作付け減少(2)2025年8月25日
-
【JAの安心・安全な24年産米調査】24年産で高温耐性品種の割合増える(3)2025年8月25日
-
水稲用除草剤「ノックアウト楽粒」の効果・作業性は? 2年連続導入の生産者に聞いた 北興化学工業2025年8月25日
-
【人事異動】JA全中(9月1日付)2025年8月25日
-
ひとめぼれの概算金2万8000円 「3000円台で安定供給」 全農いわて2025年8月25日
-
観光地の熱海再生に学ぶ 新たな事業創造の実践【JA全中教育部・ミライ共創プロジェクト】2025年8月25日
-
耕畜連携・資源循環ブランド「3‐R」6周年フェア 広島のみのりカフェで開催 JA全農2025年8月25日
-
特大野菜と岡山県産豚の"晴ればれバーガー"を期間限定販売 JA晴れの国岡山2025年8月25日
-
県のオリジナル新品種「桃太郎トマトシルク」をPR 天満屋ストアでイベント開催 JA晴れの国岡山2025年8月25日
-
【農と杜の独り言】第3回 コンテストが園芸博の特色 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年8月25日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」山梨県で大玉で濃厚な甘みの すもも「皇寿」を収穫 JAタウン2025年8月25日
-
【推しの子】コラボの福島県産もも 好評で追加注文受付開始 JAタウン2025年8月25日
-
北海道産牛乳・チーズを買って当てよう「Choose!&Cheese!キャンペーン」ホクレン2025年8月25日
-
ジャガイモシストセンチュウ類 新たな土壌検査法を開発・検査サービス開始 農研機構2025年8月25日
-
日本の農業技術をインドへ エムスクエア・ラボと共同事業開発契約を締結 誠和2025年8月25日
-
世界初スイッチ型分解ペーパーポット 持続可能な農業資材を開発 ニッテン2025年8月25日
-
化学工学会の粒子・流体プロセス部会主催国際シンポジウム「MMPE2025」に協賛 丸山製作所2025年8月25日
-
LED植物工場で「甘くて栄養価の高いミニトマト」安定生産に成功 東京大学2025年8月25日