【今川直人・農協の核心】組合員の生活を支える共済事業2024年4月9日
保険・共済事業の動向
3年ごとに実施される生命文化センターの「生命保険に関する実態調査」(令和3年3月)の結果に見られる近年の保険・共済をめぐる主要な動向は、次の三点である。
「①生命保険はほぼ飽和状態(個人年金保険を含む生命保険の世帯加入率は89・8%)②死亡保険金額は低下傾向が続く ③個人年金保険は増加傾向(世帯加入率と平均世帯年間払込保険料は増加傾向、老後の生活保障準備は『公的保障と私的保障の両方が必要』と考える人が81・4%)」
保険は、本来、教養娯楽・交際・し好品等の限界的な費用を、リスクが現実になった時の最低限の衣食住の補償に充てるもので、「薄い負担」が原則である。上記①、②に見られる傾向は、この原則が国民の間に浸透してきた表れとみることができる。
平均寿命が延びて、「大黒柱を失う」から「長生き」へリスクが移ってきている。政府は公的年金代替率50%の維持を目標としているが、現状はOECD加盟国の中で低位にある。
JA共済は6割以上が正組合員
平成21(2009)年5月に農水省が発表した「農協の現状と課題について」に、総組合員数と事業収益との相関係数が次のように示されている。
「総組合員数との間で信用事業収益は相関係数0・56007、共済事業収益は0・79506、農業関連事業収益は0・42326」
組合員数、事業収益はともに実数なので正の相関は当然であるが、算出された相関係数は信用事業と農業関連事業は「正の相関」、共済事業は「強い相関」とされるゾーンに入っている。この「現状と課題」は農協改革の先触れであった。
10年後の平成30年1月から令和3年3月まで、改正農協法の付則に基づき、農水省は貯金・貸付・共済(掛金)・購買の4事業について正・准・員外の事業利用割合の調査を行った。3回平均の割合(%)は正・准・員外の順に、貯金:42・34・24、貸出:34・49・17、共済:61・29・10であった。共済は3者の中で正組合員利用が最も高く、准組合員・員外がともに最も低くなっている。(調査は准組合員の事業利用規制問題に端を発している)
推進の在り方の見直し
アメリカの65歳以上農業従事者の割合は33・9%で、三位以下を大きく引き離して世界第二位である。首位はもちろん日本で69・6%。50歳未満はわずか10・4%である。農家・農業者の減少は高齢化以上に急である。
保険業界では営業社員による加入の割合が減少し、代理店やインターネットを通しての加入が主流になりつつある(国民共済は資料投函が主である)。JA共済は上記の環境の中で緩やかな縮小に踏みとどまっているが、推進の在り方を再考する時期に来ているのではなかろうか。他の共済を含む他業態にない組織特性を生かす事が先ず考えられる。
最も現実的な具体策を例示的に挙げれば、総(代)会、座談会等での推進である。このような組織的な推進のためには、営農を支える生活活動として共済事業を位置付けること、手頃な掛け金・掛け捨て・高齢者加入可の定期生命共済や年金共済などの組合員の立場に立った商品を重点的に推進することの二つが求められよう。また、推進目標については、支所ごとの実態に応じた「加入率(戸数や、家族・雇員を含む人数)」などの方が近年の動向、金融庁の指導(不必要な契約の自粛)並びに農協の在り方に照らして、より相応しいのではなかろうか。
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
-
【特殊報】ナシにフタモンマダラメイガ 県内で初めて確認 島根県2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 島根県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】野菜類、花き類、ダイズにオオタバコガ 滋賀県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 栃木県全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
米価 7週連続で低下 5kg3602円2025年7月15日
-
農業法人 米販売先 農協系統がメインは23% 日本農業法人協会2025年7月15日
-
2025年産米 前年比56万t増の見込み 意向調査概要2025年7月15日
-
テキサス洪水被害は対岸の火事か 公務員削減が安全・安心を脅かす 農林水産行政にも影響2025年7月15日
-
コメ増産政策に転換で加工用米制度も見直しが急務【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月15日
-
青森米パックご飯ご愛顧感謝キャンペーン 抽選で200人にQUOカード JA全農あおもり2025年7月15日
-
農機担当者向け「コンプライアンス研修会」を初開催 JA全農やまなし2025年7月15日
-
農機フェア2025を開催 2日間で5309人が来場 富山県JAグループ2025年7月15日
-
GREEN×EXPO2027 特別仕様ナンバープレート交付記念セレモニー開く 横浜市2025年7月15日
-
「幻の卵屋さん」アリオ北砂で5年ぶり出店 日本たまごかけごはん研究所2025年7月15日
-
子ども向け農業体験プログラム「KUBOTA AGRI FRONTの夏休み2025」開催 クボタ2025年7月15日
-
香春町と包括連携協定締結 東洋ライス2025年7月15日
-
官民連携 南相馬市みらい農業学校生へ農業経営相談機能等を提供 AgriweB2025年7月15日
-
鳥インフル 米ワシントン州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年7月15日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年7月15日