(387)海外留学に対する彼我の視点の違い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年6月7日
一時期「駅前留学」が流行りました。5月の連休が終わると、次は夏休みに向けての動きが始まります。
大学生を対象にビジネス関係の授業を実施していると、留学という話題を避けることはできない。海外留学に対する「夢」はかつて同じ夢を抱いた人間として大いに応援したい。ポイントは、留学の内容や期間について、一度しっかりと考えてほしいと思う点だ。
とりあえず、ここ何年も数多く目にしている外国人留学生たちの「考え方」を紹介しておきたい。彼らが海外に留学する際の根本的考え方は日本人と大きく異なる。
目的は、「読み・書き・話し」と「基本的習慣」の「完全習得」である。相手の国の全てを受け入れるとか受け入れないという次元とは全く異なる。少なくとも相手の言語と習慣を完全に理解し、同じ土俵で議論・交渉できる...、これを目指しているようだ。短く言えば「知日」であり、「親日」になるかどうかは人と環境次第である。
もちろん、個人差がある。習得には概ね10年ほどの時間を自分に対する投資と考えている。時間をかけて少しずつ階段を上る訳だ。具体的には、
・準備1年:基礎的な外国語学校通学(そこで1日の大半をその言語で過ごす)
・大学4年:個々人のレベルと関心に応じて大学・専門分野を選び、卒業
・修士2年:専門性追求(大学院進学者が少ない日本では修士取得時点で「学歴
面」では日本の同年齢集団のほぼ上位10%に入る)
・博士3年:専門分野で博士の学位を取得(これが帰国した際の「留学」完遂証明と
なる)
ところで、ビジネスの世界における日本人の海外駐在員の場合、人や環境にもよるが、概ね10年程度で、聞く・話すは、非ネイティブの外国人として到達可能な必要にして十分な水準に至ることは経験的にもよく知られている。
読むことは母国語でも一種の習慣づけが必要である。したがって、母国語ですら本や活字を追う習慣が無ければ外国語ではとても読めない。逆に、母国語で習慣付けがなされていると、ある段階を超えれば外国語の読書はそれほど苦痛ではなくなる。もっともビジネスをしていれば、仕事に必要な書類は嫌でも読まざるを得ない。
最大のハードルは書くことだ。これは聞く・話すのとは全く別のスキルであり、意識的に訓練をしなければ上達しない。留学中は、学部のレポートと卒論、大学院の修論、博論で徹底的に訓練させられる。誤解を恐れずに言えば、日本の多くの外国人留学生は、専門分野自体に対する知識や技術の習得もだが、留学の10年間、とくに後半の5年間では徹底的に「日本」自体の「完全習得」にむけて鍛えられている(各大学が鍛えている)とも考えられる。日本人が海外に留学する場合はこれが逆になる訳だ。
実は、こうした方法は米国も長年実施している。究極系は対象国の人を配偶者あるいはパートナーとする場合になる。これで「公」の部分に限らず「私」の部分も習得が容易になる。
筆者の海外生活は、ブラジル1年、米国7年、オーストラリア2か月にすぎない。10年間の階段から見ればまだ中途である。そのため、意識して定期的に海外を訪問し、鈍った頭と身体を鍛える機会を作ってきた。それでも感度と能力の維持は大変である。
さて、この時期、国内の大学ではいずこも夏休みの短期留学の勧誘が始まる。忙しい社会人に対しては1週間からの超短期留学まで登場している。ビジネスや観光を兼ねたこうした留学はそれで良いし、まず行くのは非常に重要なステップ、これは間違いない。あえてモノ申せば、大学生はせめて1年、大学院生は2年程度、社会人はそれに相当する実践、とにかく長い階段を上ると異なる世界が見え始めるので、是非とも腰を据えて挑んでみてほしい...ということだ。
* *
センスはゼロではありませんが、一定の「修練」を避けての習得は難しいということです。
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