海上輸送が半数を超えた輸入切り花【花づくりの現場から 宇田明】第37回2024年6月27日
2023年の切り花の供給量は、国内生産が31億本、輸入が13億本。
輸入切り花の55%が海上輸送で、中国から1週間、マレーシア・ベトナムから2週間、コロンビアから4週間かけて日本へ運ばれてきます。
切り花は鮮魚とおなじで、鮮度が命。
花産業の使命は、生産者が収穫した切り花を、一刻も早く消費者に届けることです。
輸入切り花も輸送時間を短縮するために、航空輸送が当然と考えられていました。
そのため、コロンビアやケニアのような欧米資本による大農場は空港近くに建設されています。
それがいまでは世界的に海上輸送が主力になっています。
日本の輸入切り花も海上輸送が急増しています。
2023年には海上輸送が55%に増え、航空輸送を上まわりました。
その背景には、航空貨物運賃の値上がりや円安で航空輸送コストが上昇したことと、切り花の鮮度保持技術や海上コンテナの温度コントロール性能が向上したことがあります。
海上輸送の割合は、生産国により異なります。
輸入数量1位の中国は98%が海上輸送ですが、2位のコロンビアは12%、3位のマレーシアは19%に留まっています(図1)。

切り花品目によっても異なります。
常緑樹で、その小枝を束ねた中国産サカキ・ヒサカキは草花類より輸送耐性があるので、はじめからすべてが海上輸送です(図2)。

しかも、草花類のような陸揚げ後の水あげやリパック作業が不要で、中国から原箱のまま市場や花束加工業者などに輸送できます。
比較的輸送しやすく日持ちが長いキクは72%が海上輸送です。
輸入数量1位のマレーシア(スプレーギク)は26%ですが、2位の中国(輪ギク)は99%が海上輸送。
カーネーションは43%が海上輸送で、1位のコロンビアは12%ですが、2位の中国は98%に達しています。
バラは、萎れやすく、日持ちが短く、かびが発生するので、長時間の乾式輸送がもっとも難しい切り花です。
そのため、国産バラはすべてがバケットか水入り縦箱の湿式で輸送されています。
輸入バラは乾式輸送のため、海上輸送は5%しかありません。
しかも、海上輸送は近隣の韓国、中国に限られ、アフリカのケニア、エチオピア、南米のコロンビア、エクアドルはすべて航空輸送です。
安価なアフリカ産、南米産のバラを海上輸送できないことが、バラの輸入が増えないおもな原因です。
輸入が増えないから、国内生産が増えたということもありません。
輸入が増えないことで、お手頃価格でバラを供給することができず、消費が減るという負の連鎖に陥っています。
海上輸送の輸送量が空輸より圧倒的に大きいことは利点ですが、課題もあります。
一般的な40フィート冷蔵コンテナでは、少なくとも30万本の切り花を輸送することができるので、切り花1本当たりの輸送費は安くなります。
同時に、輸入業者には、生産国でのコンテナを満たす切り花を集荷する力、日本国内での大量の切り花を販売する力が必要になり、輸入業者の淘汰がすすむでしょう。
鮮度が命の切り花を長時間、海上輸送するにもかかわらず、輸入切り花は鮮度が問題にならないのでしょうか。
また、収穫後、すみやかに消費者に届き、鮮度が高い(はずの)国産切り花の評価が高まったのでしょうか。
残念ながら、海上輸送が増えて輸入切り花の評価が下がり、国産の価値が再確認されたということはありません。
なぜでしょうか。
それは、切り花の鮮度には科学的な定義がなく、収穫後の時間ではなく、主観的な見かけのみずみずしさだけで判断されるからです。
切り花の鮮度については次回検討します。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































