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【今川直人・農協の核心】農福連携~社会の公器として2024年9月10日

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急展開の「農福連携」

就労対象の障がい者(18~64歳の在宅者)は480万人、うち就労しているのは114万人である。

障がい者雇用は早くから国民の大きな関心事であったが、農業部門での取り組みは長い間低調であった。「障害者雇用促進法」(1960年)が定める法定雇用率(現在2・5%、つまり従業員40人で障がい者一人)に該当する農家がなく、家族労働が主な農業では自主的な雇用も進まなかったためである。しかし、年号が変わる2019年ごろを境に事情が大きく変わってきた。背景は農業労働力の急激な減少である。

2019(平成31)年4月に設置された法務・文科・厚労・農水4省による「農福連携等推進会議」が、6月(令和元年)の第2回会議で「農福連携等推進ビジョン」を取りまとめた。農福連携の取り組みは令和元年以降年々増加し、令和5年度末には7179件に達している。内訳は農業経営体・農協による取り組みが3399件、特例子会が60件、障がい者就労施設が3720件である。推進会議の「農福連携等推進ビジョン」(令和6年6月改定)は、目標を令和12年度末までに1万2000件以上としている。

農福連携で骨格が整ってきた農村振興

2015年の「食料農業農村基本計画」は、「地域資源の活用による雇用と所得の創出」の項で、6次産業化とバイオマス等の再生可能エネルギーの普及を中心に観光、教育、福祉等との連携を取り上げている(「福祉等」は介護が主体である)。2020年基本計画では、農村発イノベーション(新事業や付加価値の創出)等に「農福連携」が加わっている。そして、2024(令和6)年の改正基本法に「障害者等の農業に関する活動の環境整備」(農福連携)が新設された。基本法の3本柱の一つ「農村振興」の骨格が整ってきた。

農協への期待

中央・地方の農水・厚労両行政、一般社団・公益財団を含む多くの法人や団体による啓発、情報、支援人材の育成などの推進体制が仕組まれている。

農水省の「農福連携事例集」(令和6年8月)は108の事例を紹介している。各事例について取り組みの内容、体制、成果、プロセス(きっかけ、拡充、展望)が具体的で、新規の取り組み・改善工夫に有用な材料を提供している(以下に一部を例示)。

(作業)手作業を中心とした作業を創出(は種・定植、収穫、収穫物の袋詰め)、農協選果場に農福レーン、障がい者がロボット田植え機やアシスト付きコンバインを操作/(成果・賃金)家族経営で栽培面積・販売額が拡大(障がい者への賃金にも反映)、作業単位の請負制/(農業経営体)社会福祉法人が認定農業者として農協正組合員に、6次産業化に取り組む福祉事業所...

108事例の内、取り組み主体6を含む16事例で農協の活動が取り上げられている。マッチングなどの調整と農協事業への就労の二つの関りを持つが、農協の共同利用施設での作業が、農家に出向く準備の場となり、また組合員やパートとして働く組合員の家族とのコンタクトの機会として農福連携の拡大につながっているようである。

農水省とJA全中、日本農福連携協会は2021年4月、農福連携に関する包括的連携協定を締結している。(本紙既報)

社会の公器として、農協への期待は大きい。

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