"論"を戦わせず、"行動の一致"で共同の戦いを【近藤康男・TPPから見える風景】2024年10月3日
本原稿も100号が射程に入るようになった。これ迄、TPP(CPTPP)から始まる日EU・EPA、日米貿易協定、日英・EPA、RCEP、IPEFと続く一連の多国間貿易協定などの分析を試みてきた。振り返ってみると、最初の「TPPから見える風景1」は2016年10月6日付で、国会審議を急ぐ日本と、審議に入らせない米国議会との違いを紹介した寄稿だった。
そして結局、合意署名したオバマ政権では議会審議も出来ないまま、トランプ新大統領が2017年1月21日に就任、同23日にTPP離脱の大統領令に署名する事態となった。その後米国は新たにいくつかの貿易協定を締結したものの、新たな多国間経済連携協定、特に貿易については距離を置くようになり、2022年にバイデン大統領自らがが提起したIPEF(インド太平洋経済枠組み協定)4分野のうち、貿易分野は漂流したままとなっている。
市民による反対運動を振り返る:その発端は?
これまで、協定の分析・批判を97号まで続けたが、残る3号で、「TPPに反対する人々の運動」(以下「人々運動」とする)の立場で、国際的に広がる反対運動の経緯に触れ、100号を閉じることとしたい。
発端は2010年10月の民主党政権・菅首相の所信表明だった。それを受けて、少数の仲間の呼びかけで、押っ取り刀で動き出したのが、後の「人々の運動」に参加する少数の百姓と市民だった。国際連帯を軸に運動を進めようと、NZ・のジェイン・ケルシ-氏と連絡を取り、そこから2,011年11月のハワイでの国際会議「モアナ・ヌイ」に向けて準備が始まった。まず、「人々の運動」は、当時の野田首相宛に、10月12日付の「TPP交渉への参加に強く反対します」という申し入れ文書を送った。
"具体的"な国際連帯運動への手掛かり
3日間の「モアナ・ヌイ」は、米国・アジア・太平洋島嶼国の市民団体がハワイ現地に集まって、グローバリズムとハワイでのAPEC首脳会合に反対し、連帯を求める集会だった。日本(人々の運動、北海道農民連盟などの団体や個人、沖縄からも)、フィリピン、NZ、韓国、ドイツ、ロシアなどから、市民団体や個人の参加者が結集していた。「人々の運動」は主催者に強く働きかけ、ワ-クショップを開くとともに、パネリストの一人として、1名が壇上に座って発言をすることになった。
ここでNZのジェイン・ケルシ-氏、米国「パブリック・シチズン」のロ-リー・ワラック氏などと出会ったことが、その後の、スローガンだけではない、文字通りの国際連帯としての反TPP運動の出発となった。「人々の運動」は、"TPPは農業の市場開放に止まらず、新興参加国の市場開放を求め、地域の特性を否定して共通の規制を拡げる包括的な国際条約である"と訴え、パネルディスカッションでは、"3.11東日本大震災"を念頭に、「福島復興にTPPはいらない!」という声を挙げた。
行動で一致する、構成員ベースでは500万人を超える超党派の反対運動の陣形へ
「モアナ・ヌイ」を受けて、「人々の運動」は、"意見を戦わすよりも行動で一致する"こと、超党派で"幅広い陣形を作る"ことを原則として、多くの社会運動団体に足を運び、既存の政党の枠を超えてテーブルを囲む「円卓会議」を立ち上げた。確か、司会役も持ち回りだったと記憶する。労組、生協、消費者団体、NGO、農業団体(当初は全中も)、農民運動、医療団体等々だ。この円卓会議はその後「STOP!TPP市民アクション」へと改名し、更に、反対の声を挙げる多くの団体との協力関係強化を進めた。2013年後半には、国会議員が50名以上の参加で「TPPを慎重に考える会」を結成、元職議員の主導で立ち上げられた「TPP阻止国民会議」も結成されて、反対運動は急速に拡がった。
そして、北海道・東北を始め、全国各地でもネットワ-ク型の反対運動が広がった。
「STOP!TPP市民アクション」は「TPP阻止国民会議」との共同行動を中心に反対運動を続け、2015年10月のTPP12の大筋合意、2016年2月のTPP12合意署名を受けて、両団体の共同ノネットワ―ク組織として、"発効"に焦点を当てた「TPPを発効させない!全国共同行動実行委員会」、そして、発効後は「TPPを批准させない全国共同行動」として反対運動を継続した。
暫くぶりに1万人規模で日比谷野外音楽堂、芝公園を埋める、そして連日の国会前座り込みへ
上述の団体、ネットワークは、以下のように集会名称に違わない、数千人以上の集会を繰り返し実現してきた。
〇2012年4月には「STOP TPP!!1万人キャンドル集会を日比谷公園で「TPPを考える国民会議」や「4・25TPP反対市民アクション実行委員会」などが共同で開催。
〇2013年5月芝公園での「TPP参加をとめる!5.25大集会」を「STOP TPP!市民アクション」が主催。
〇2016年10月にも芝公園で「TPP(環太平洋経済連携協定)を批准させない!?1万人行動・中央集会」を農業団体や消費者団体、労働組合、市民団体などで構成する「TPPを批准させない! 全国共同行動」が主催。
〇2016年10月以降は批准反対の声を挙げることを目指して、文字通り連日の国会前座り込みを、「TPPを批准させない!全国共同行動」が実施。
しかし、連日の反対行動にも関わらず、2016年2月には、12ヶ国による合意署名がNZで実施され、2017年1月20日に国会で批准された。その後米国の脱退でCPTPPとなり、2018年7月に批准、18年12月に発効することとなった。
そして、その後も多くの経済連携協定の交渉が続く中で、「TPPプラスを許さない全国共同行動」と名称変更をしながら、直近のIPEF(インド太平洋経済枠組み協定)まで運動を継続した。現在は総括を終えて、まとめの冊子「TPPと闘った10年 いのち・暮らし・地域を守るために」を発行したばかりだ。
次回は、国内外での反対運動による国際連携の取り組みを紹介したい。
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