シンとんぼ(112) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(22)-2024年10月5日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを考察している。シンとんぼなりの結論は、「現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろう」ということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかを探りながら持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大に向けた新技術をテーマに検討を行っている。
前回より、2050年までに実用化を目指している「土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・肥料栽培の拡大」について検討している。
みどり戦略の新技術説明資料によると「土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・肥料栽培の拡大」とは、土壌微生物叢と作物の生育情報、環境要因との相互作用を解析し、土壌微生物も持つ機能をフル活用し、農薬・化学肥料に頼らず食料増産を果たすとしている。土の中を完全制御することで、化学肥料ゼロでも食料増産が可能で温室効果ガスの発生抑制も可能だとしている。
この技術の根幹に据えられているのは、土壌微生物叢の有効活用である。というのも、優れた農産物を生産できる農の匠は、「土が作物が作るのではなく、土壌の中の微生物が作るのだ」という言葉が根幹にあるとのことだ。この匠の技術を支えている土壌微生物叢の土壌内での代謝メカニズムなどの働きぶりを最新のデータ解析技術により明らかにすることによって、匠の技を実現しつつ、効率的な減農薬・減化学肥料栽培や有機栽培につなげていけると考えられている。
確かに、土壌中の微生物叢がすごい働きをしているんだろうなとは想像がつくが、その詳しいメカニズムがデータ化され体系化されているわけではなく、現段階では、データを積み重ねビッグデータ化・解析し、動的に把握することを目的として取り組みが進められているとのことだ。
把握しようとしているデータは、菌叢の遺伝子情報(マイクロバイオーム)、遺伝子配列(メタゲノミクス)、土壌や農作物の代謝物情報の取得(メタボローム)、脂溶性代謝物の測定(リピドミクス)、硫黄代謝物の測定(スルフィドミクス)、微量元素の測定(メタロミクス)などで、これらが蓄積・解析され、匠の技による生産がデータに基づき再現できると期待されている。
いずれにしろ、目標としている25年後(2050年)までにどれだけ実用性のある技術になっているかは、研究の成果を待つしかないという状態のようだ。
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