生産量が増えても需給は緩まないという見方も【熊野孝文・米マーケット情報】2024年10月15日
農水省が10月11日に6年産水稲の9月25日現在の予想収穫量を発表した。大方の予想通り主食用米の生産量は前年産より多かった。作況ポイントの上昇も加わって増加した数量は22万3000tであったが、予想収穫量は683万3000tに留まった。この原因は、飼料用米の作付面積が前年産より3万3900㏊も減ったものの、その分のすべてが主食用作付に向かわなかったことや水張面積そのものが減っていることも要因として挙げられる。このため全農系統や全米販はコメの需給は緩まず、新年度(旧米穀年度R6年11月~R7年10月)はタイトな状況が続くと予想している。

全米販は農水省から予想収穫量が出た当日にホームページ上に食糧部会の7月指針で公表された需給見通しに今回の予想収穫量を入れて修正したものを示した。それによると令和6/7年度(6年7月~7年6月)は、期初供給量は6年6月末在庫156万㌧+6年産主食用米生産量683万㌧=839万t。これに対して需要量は673万tと見込んでいるためそれを総供給量から差し引くと7年6月末在庫は166万tになる。農水省の需要見通しでは、前年度は702万tであったのに対してなぜか今年度の需要量を673万tと見込んでおり、これが増えるようであれば「来春にも令和のコメ騒動再び」などということになりかねないと全米販は警戒している。全農は、今週17日にも記者会見する予定で、その席で主食用米の需給見通しや系統集荷の状況について説明するものと見られるが、おそらく683万㌧の生産量でも需給が緩和するとは見ておらず、系統の集荷見込についても厳しい見通しを述べることになるだろう。このことについては主要産地で相次いで集荷概算金を引き上げていることでも明らかで、商系の庭先買取価格との価格差が大き過ぎて集荷に苦戦しているというのが実態である。
系統集荷量の減少は、卸に対して事前に提示する相対取引枠を縮小せざる得なくなることを意味しており、大手卸といえども系統枠の減少分は自ら調達しなければならなくなる。すでに全農県本部が示した相対価格より農協直売の価格が高くても売れるという逆転現象が起きており、系統集荷販売の構造そのものに亀裂が入っている。大手卸にとって量販店・コンビニベンダーグループのコメを調達するというのは至上命令であり、足りなかったで済まされる問題ではない。すでにグループ外の外食店向けの供給は断念してグループ内に特化し始めた大手卸もいる。
最大の問題は全米販も指摘しているように、農水省は今年度の需要量が前年に比べ約30万㌧も減って673万㌧になるという見通しの理由を今月末の食糧部会で納得できるように説明をしなくてはならない。農水省の需給見通しは、前年度(5年7月~6年6月)は3月時点で681万㌧を見込んでいたが、7月の食糧部会ではいきなり702万㌧の需要があった公表した。わずか4ケ月で21万㌧も狂う需要見通しなどあり得ない。なぜこうしたあり得ないことが起きるのか?農水省はさまざまな要因を挙げて理由の後付けをしたが、その本質的原因はコメの需給見通しを主食用と非主食用に分けて公表するからである。
6年産米で非主食用米とされるコメの量は計画認定ベースで90万㌧もある。その内訳は飼料用米52万7,181t、米粉用米3万3,333t、新市場開拓米(輸出用米)6万2,386t、加工用米27万7,373t、これらに加え政府備蓄米の買入数量17万2,016tも加えられるので総量は107万tにもなる。この数量は非主食用米扱いになっている。輸出用を需要にカウントしないのは日本だけの需給策定方式だが、それ以外にもなぜ非主食用米扱いになっているのかわからないもの、例えば冷凍米飯や包装もちなどもあり、この区分けは実に不思議である。供給面においても主食用米と非主食用米のどのように区分けしているのか理解できないこともある。例えば統計上の生産量はライスグレーダーの網目1.7ミリ以上のものをカウントすることになっているが、生産者が使用している網目は地区によって違うが平均で1.85ミリであり、その下に落ちたいわゆるくず米は主食用米としては使われない。ところが需給がタイトになって価格が上がると主食用米の増量原料として使われるので、常に供給量の変動要因になる。つまり、需要面、供給面双方において主食用米と非主食用米を分けて主食用米だけの需給見通しを出すこと自体に無理があり、狂った需給見通しを出す要因になっている。同じコメを制度によって区分けして用途を限定して法律で縛っているようではまともな需給見通しが出来ないばかりか、流通で目詰まりを起こしていつまでたってもコメ全体の需要は拡大しない。
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