パックご飯の原料米にハイブリッド米契約栽培推進【熊野孝文・米マーケット情報】2024年12月3日
関東の米穀業者はクリスタルライスの取引会について「仲介業者から買ってクリスタルに売りメニューとして晒せば確実に6%の利益を得ることが出来る」と言っていた。取引会を開催するたびに右肩上がりに値上りしているのだからその通りなのだろうが、11月28日に開催された取引会はそれ以上の利益を確保できた。なにせ売り唱え価格より上値で成約したものが続出して成約率が9割を超え、今や国産米3万円というのが当たり前になってしまった。コメの急激な値上がりに危機感を強めた中食・外食企業はコメ確保のために産地の囲い込みを真剣に検討し始めているが、パックご飯メーカーも同様で、中には大手商社と組んで自社が使用する原料米を確保するため生産者の組織化に乗り出したところもある。組織化と同時に栽培するコメは超多収のハイブリッド米種子に特化して生産者に提供するという事業を開始した。

国内での需要増加に加え、海外への輸出も視野に国の後押しもあって次々に新工場建設を打ち出しているパックご飯業界。そのパックご飯業界でも現在の最大の懸案事項は高騰するコメをいかに確保するかにある。中には工場新設は2年後であるにもにもかかわらず、今から工場建設予定地周辺の産地に原料米供給ルートを築こうとしているメーカーさえある。また、産地自治体と連携協定を結び、その地区で生産されるコシヒカリの2等米をパックご飯の原料米として優先的に買い入れているところもある。
なかでも特筆すべきは大手商社と組んで、産地に生産者組織を作り、契約栽培に応じる生産者に対して超多収穫米のハイブリッド米の種子を提供、生産されたコメを買い取るという手法でパックご飯の原料米を確保する仕組みづくりを始めたところがあり、11月に産地で説明会を開催した。
説明会で配布した資料によると、この品種の特徴は、第一に多収であることで「穂が大きく(最大200~300粒) 千粒重も大きい(24~26g)」、第二は良食味で、コシヒカリ由来の良食味で、 食味の異なるうるち・弱い半糯性の2種類。1・2号→うるち米、あっさりとした食感。 3・4号→弱い半糯性、粘りがあり、もっちりとした食感。第3番目の特徴とし広い広域栽培性を上げている。早生と晩生の2つの熟期があり、広い範囲での栽培が可能。東北から九州までの栽培実績がある。
多収の実証データとしては驚くべきデータが掲載されている。それはドローンによる直播栽培のデータで、2023年産米では全国50生産者のデータとして10アール当たりの収量が掲載されており、最も収量が高かった生産者は、秋田県で775㎏、石川県798㎏、茨城県696㎏、千葉県706㎏となっている。平均値でも600㎏から681㎏の収量を得ており、一般的なドローンによる直播栽培の収量に比べるとはるかに高い収量を得ている。直播栽培のデータとしては、ドローンでの直播以外にグリーンドリルや不耕起V溝乾田直播、湛水直播などのデータも出ているが、いずれも一般品種を使った移植による慣行栽培の収量に比べ高い収量を上げており、なかには乾田直播で880㎏という信じられないような高収量を上げている生産者もいる。この品種を使用して直播栽培を行う際の栽培上の注意事項や対策もこと細かく書かれているが、面白いのは鳥害を防ぐために種子に鉄コーティングする際に磁石に着かない素材を使用するコーティングもあることが紹介されている。これはドローンで種子を播く際に散粒器に種子が付かないようにする工夫。
この種子を使った契約栽培では、パックご飯の原料米として7年産米で10万俵を計画しており、農業生産法人はもとより一般の生産者であっても参画できるように案内文を県内に配布した。また、自治体の協力も得て種子代金の補助も実施されることになった。
パックご飯メーカーは、災害があるたびに需要量が伸びており、今年も能登震災に続き、南海トラフ地震注意予報などが影響したコメ不足騒動では受注を断らなくてはならないほど需要が急増したが、その後、6年産米の価格が急騰、原料米コストの値上がりを吸収するために1パック20円値上げしなければならなくなった。ところが原料米価格の値上がりはパックご飯メーカーの想定以上で、市中相場で原料米を手当てするようでは今後企業として経営が成り立たないという危機感も芽生え、自ら産地を開拓して契約栽培というビジネスモデルを構築する必要があると判断している。
コメ加工食品メーカーの原料米対策では、米菓、味噌は加工用米やMA米、冷凍米飯メーカーも加工用米契約できるがパックご飯メーカーはそうした制度米穀は使用できないため自ら低価格の原料米を確保するルートを開拓しなければならず、今後こうした動きは加速度的に広まっていくことになるだろう。
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