(413)寿司とピザ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月6日
グローバル化した食品の成功例は寿司とピザかもしれません。今では、世界中どこでも、かなりの確率でどちらも楽しめるのではないでしょうか。
1980年代後半のニューヨークではまだSushiはエスニックかつニッチな食べ物だった。筆者は1988年の大半を現地で過ごした。経験のため多くのレストランを利用したが、外国人だけで日本食レストランに来るケースは比較的少なく、必ず誰か日本人の同僚なり友人なりと一緒に来ているケースが大半であったように記憶している。
当時の行きつけの日本食レストランで夕食を食べていた際、隣席の外国人が同席している日本人から刺身を進められ、両肩をすくめ両手のひらと指を立てる形で拒否していた姿が記憶に残っている。「こんなうまいものを...」という表情をしつつ箸で刺身をつまむ日本人に対し、「よく生の魚など食べられるな...」という表情も強烈であった。彼らは最終的にはカリフォルニア・ロールのようなものだけは食べていたと思うが、残った刺身盛り合わせを横眼で見つつ、こちらは粛々と一人で鉄火丼を食べていた。
少し郊外に出れば、巻き寿司がパックに詰められスーパーで販売され始めた時代である。寿司はヘルシーかつ種類によっては高級品というイメージが強く、それが米国では富裕層だけでなく多くの人々の間に人気となり、その後の需要拡大へとつながった。
一方、伝統的な寿司を食べ慣れた日本人には驚きの寿司も拡大している。もう何年も前になるが、講義で「レインボウ寿司(Rainbow Sushi)」を紹介した。今でもこの言葉で画像検索すると実に色鮮やかな寿司がいくつも見つかる。太巻きと言えば、卵焼きとかんぴょうで育った世代には、カラフルな太巻きは眼に眩しい。最近は単に色だけでなく、切り口に様々なキャラクターや花などが出るなど、工芸品レベルに達した太巻きが内外ともに多く存在する。是非、いろいろと試して頂きたい。
さて、ピザはどうか。ピザは寿司よりはるかにグローバル化が進展した食品である。よく言われる食べ方の違いは、日本のように切分けて数人でシェアするのではなく、一人一枚を頼むようだ。筆者が過ごした米国ではどちらのパターンもあり得たと記憶している。
構造面で見れば、簡単・簡潔なベース(土台)があり、そこに何を、どう乗せるかという点がこの2食品の共通点である。各地域や各レストランの特徴を自由に出せる点、これが商品としてのピザの市場が拡大した大きな要因のひとつであろう。おそらく本家イタリアでは「ねぎみそピザ」や「しらすレンコンピザ」、「明太子ピザ」などは想像もつかないかもしれない。先ほどのカラフルな寿司など日本では考えられなかったのと同様である。
現代のピザは、恐らく世界で最も普及した大衆料理のひとつであり、市場規模だけで見れば寿司は残念ながらまだまだピザには及ばない。
もはやピザは国や文化という縛りを超えて世界中に普及したと言ってもよい。これにはピザ・ハットやドミノ・ピザなど米国系ピザ・チェーンの世界展開の影響も大きい。ピザに関する唯一の否定的なイメージは、「高カロリー・高脂肪」といった健康への影響である。先進国では健康問題に関心を持つ消費者が多い。生活水準の向上に伴い、この問題は途上国にも着実に拡大していくであろう。
これに対して寿司は、依然として「高級品」と「ヘルシー」なイメージを備えながらマーケットが拡大している。これらのイメージのおかげでピザほどはマーケットが拡大してはいない。だが、様々なバリエーションを伴いながら、今後の成長性は十分に見込まれている。
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「寿司ピザ」というバリエーションもあります。気になる方は検索してみて下さい。
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