【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】これ以上農家に負担を押し付けてはいけない~国内生産は過剰でなく足りていないのだから生産調整でなく出口調整が不可欠2024年12月18日
お金を出せば食料はいつでも安く輸入できる時代でなくなった一方、国内農家は減少速度を増している。国内生産は過剰でなく足りていないのだ。
今こそ、すべての農産物の国内生産の増大に全力を挙げて、国産で輸入を置き換えて輸入依存を減らすとともに、備蓄も増やして、不測の事態に子ども達の命を守れる準備を強化するのが命を守る安全保障、「国防」だ。
コメ騒動を受けても変わらぬ「コメ過剰論」の不思議
なのに、相変わらずのコメは過剰と言い続ける政府の需給見通しで減産要請をし始めた。生産者が継続できるセーフティネットを構築する議論なしには、コメ不足は解消できない。
かつ、猛暑でふるい下米が増えていることは作況指数に反映されていない。だから、生産量を10万トン減らすと減らし過ぎになる。
一方、需要は減るとの見通しには、安全保障上の需要が欠落している。91万トン、1.5ヶ月分で不測の事態に国民の命は守れない。
小麦やとうもろこしの輸入が減るリスクも高まっている中、コメのパンや麺を増やし、コメの畜産飼料を増やすのは国家戦略的な安全保障上のコメ需要、貧困層増大の下でのフードバンクや子供食堂を通じたコメ支援も必要だ。
それらを合わせたら、コメ需要は大きく広がっており、減反でなく、増産こそが求められている。こうした判断ができずに、いまだに、コメ過剰を言い続けている感覚を疑う。
酪農生産は足りていない~酪農家にしわ寄せし過ぎ
酪農家が1万戸を切り、減少が加速しているのが問題になっている最中、脱脂粉乳の在庫が多いから生産抑制だ、協力せずに絞って系統外に売る酪農家には補助金を出さないようにしようという方向性が出ている。
発想の方向性が間違っている。今こそ、酪農家が自由に増産できるようにするのが不可欠だ。国内生産が多すぎるのでなくて、輸入が多すぎるのだ。他の国のように脱脂粉乳とバターの在庫を政府が持ち、需給状況に応じて、過剰時に買い入れ、国内外の援助にも活用し、不足時に放出すれば、わずかな民間在庫増加で、こんなに酪農家に負担を押し付ける必要などない。
酪農家のコストに見合う乳価に届いていない分は海外のように補填して、これ以上の酪農家の減少を食い止めなくては、本当に子どもたちに牛乳が飲ませられなくなる。
輸入が8割を占めるチーズ向け生乳を増やす内外価格差補填で大幅に輸入への置き換えができるが、それにかかる財政負担は、オスプレイ1機の購入代金が220億円とすれば、オスプレイ1機の半分を酪農家あるいはメーカーに補填するだけでできる。
食料・農業・農村を守るのは国民の命を守る安全保障のコストだと認識すれば、それを渋って、農家を苦しめ、国民を苦しめる愚かさに一刻も早く気づいてほしい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(172)食料・農業・農村基本計画(14)新たなリスクへの対応2025年12月13日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(89)フタルイミド(求電子剤)【防除学習帖】第328回2025年12月13日 -
農薬の正しい使い方(62)除草剤の生態的選択性【今さら聞けない営農情報】第328回2025年12月13日 -
スーパーの米価 前週から14円下がり5kg4321円に 3週ぶりに価格低下2025年12月12日 -
【人事異動】JA全農(2026年2月1日付)2025年12月12日 -
新品種育成と普及 国が主導 法制化を検討2025年12月12日 -
「農作業安全表彰」を新設 農水省2025年12月12日 -
鈴木農相 今年の漢字は「苗」 その心は...2025年12月12日 -
米価急落へ「時限爆弾」 丸山島根県知事が警鐘 「コミットの必要」にも言及2025年12月12日 -
(465)「テロワール」と「テクノワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月12日 -
VR体験と牧場の音当てクイズで楽しく学ぶ「ファミマこども食堂」開催 JA全農2025年12月12日 -
いちご生産量日本一 栃木県産「とちあいか」無料試食イベント開催 JA全農とちぎ2025年12月12日 -
「いちごフェア」開催 先着1000人にクーポンをプレゼント JAタウン2025年12月12日 -
生協×JA連携開始「よりよい営農活動」で持続可能な農業を推進2025年12月12日 -
「GREEN×EXPO 2027交通円滑化推進会議」を設置 2027年国際園芸博覧会協会2025年12月12日 -
【組織改定・人事異動】デンカ(1月1日付)2025年12月12日 -
福島県トップブランド米「福、笑い」飲食店タイアップフェア 期間限定で開催中2025年12月12日 -
冬季限定「ふんわり米粉のシュトーレンパウンド」など販売開始 come×come2025年12月12日 -
宮城県酪初 ドローンを活用した暑熱対策事業を実施 デザミス2025年12月12日 -
なら近大農法で栽培「コープの農場のいちご」販売開始 ならコープ2025年12月12日


































