【今川直人・農協の核心】伝わる全農の緊張感2025年1月14日
農業および農協他事業の環境悪化が、農協法改正後の「5年後見直し」の緊張をさらに高めて持続することを経済事業に求めている。
「なくてはならない全農」
全農の事業計画は2030年に向けた「長期」、3年ごとの「中期」及び「単年度」の三つで構成されている。長期計画の目標である「2030年のグループの目指す姿」は「持続可能な農業と食の提供のため"なくてはならない全農"であり続ける」とされている。
「なくてはならない」は、「日本の食料と農業は農協が守る」のように存在意義を主張する用法ではない。真剣に取り組まないと「なくてもいい存在になってしまう」という危機感をストレートに表わしたものである。各項とも焦点が事業の充実と伸長にあって、非経済的なフリル(装飾)が抑えられ緊張感がある。
高まる全農の役割
令和1~4年度の4年間の農協の経済事業(農水省「一斉調査」の取扱高)を見ると、①農畜産物の販売がわずかに減少し(年平均約△1%。米は年平均約△4%)②生産資材の購買が増加している(令和4年度の前年対比では、飼料117.1%、肥料124.1%、生産資材全体で106.6%)。
令和5年度まで発表されている全農の取扱高は上記の農協と様相が異なる。すなわち、米(米穀農産)、畜産、販売合計とも令和2年度を底に令和5年度まで増加している。中期(令和4-6年度)事業計画で策定した年度ごとの「経営計画」は第2年度以降上方修正している。事業の性格から販売と購買で全農の役割に差異があったが、「事業二段」に伴う分担、つまり農協が吸収しなかった経済連の補完機能を全農が担う関係が販購両面で実現している。
農協活動を請ける全農の事業
しかし、全農は膨大な農協の活動の一部を引き受けているに過ぎない。全農の計画は農協の計画の一部である。
全農長期計画の目標「2030年に向けた全体戦略」は6項から成る。冒頭の「生産振興」で「TAC活動の強化や革新的な技術などによる生産性向上、JA出資型法人への出資など生産基盤の維持」を最重要課題としている。数多い課題がある中で、大胆な選択である。
第一に1996年に全農が提唱したTACを据えている。購買事業でスタートしたこの制度は、事業推進と紐帯強化双方の基礎的活動として、農協の創意が加えられ定着している。JA岐阜は夏冬2回の総代会の結果(タブロイド)を持って全職員が全組合員を訪問し、夏季には6名の全常勤役員が分担し一戸30分以上をかけ管内350名の認定農業者を訪問する。役員訪問は2か月半を要する。
「革新的技術」(研究開発)に続く「JA出資型法人への出資」は農協の農業経営の支援である(単年度計画では「地域の農畜産物の生産支援」に含めている)。国内農業の困難から、2024年度の農産物輸入や食料自給率の深刻な実態が順次公表されるであろう。正念場である。
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