【今川直人・農協の核心】全中の復権2025年4月7日
中央会制度廃止の意志
2015年農協法改正で中央会制度が廃止された当時、滋賀県立大学名誉教授小池恒男氏が法改正の影響、今後の農協の在り方等について、(一社)農業開発研修センターの機関誌「東山三十六峰」に「『中央会制度の見直し』は何を意図しているか」という一文を寄せている。その中で、規制改革会議農業ワーキンググループでの中央会制度の検討経過について詳しく述べている。第1回(2013.9)から第17回(2014.5)までの間で、第4回以降農協の在り方が検討されたが.第16回で外部で準備された中央会制度を含む書類が提出され、座長が何人かの委員から賛意を得て2,30分の議論で原案承認となったことが記されている。
規制改革会議が真の火付け役でなかったということである。行政の強い意志が働いている。同教授は中央会制廃止の行政の説明を念頭に、中央会の重要性を強調している(後掲)。
中央会は期待に応えたか
中央会制度の廃止は、農業および農協にとっては大きなできごとであった。廃止が唯一の方法ではなかったのではないか。廃止の背景の中に、中央会は農協経営が悪化した昭和29(1954)年に行政に代わって農協の指導 ・監査を行う特別な制度として導入されたと言う一項がある。経済事業赤字がきっかけとなった法改正で、監査はともかく指導のために作った中央会を廃止するというのは不自然なので、合併と県域農協を添えた。しかし、なお無理がある。結局、ぎょうせいによる「評価」であろう。
事業の第1を営農指導に置き換えた2001年農協法改正後の10年余の間が、必然的に評価の対象となった。法改正の翌年設置された「農協の在り方研究会」は、2003年3月に、報告書「農協改革の基本方向」を取りまとめた。この中で、経済事業について農産物の販売や生産資材コストの削減等について2015年農協法改正直前の全農改革同様の具体的方向を打ち出している。
そして、その推進を中央会、と言うより全中に指示している。項目は「中央会のリーダーシップの発揮」である。全中が中心となって経済業版自主ルールを策定・公表・指導する、全農は全中の指導指針に従って自らの改革を進めるとともに、全中の指導指針に従って改革を行うJAに対して、全中とともに支援に努める等である。全中はできるものは形を整えたが、実効のある対策の多くは後の行政による全農改革に委ねられることになる。全農改革のあの強烈な行政指導が全中に期待されていたとしたならばかなり過酷である。
農業振興に資する具体的活動を
評価のもう一面は減点をどう少なく収めるかである。目指す方向は基本的に同じである。好ましい方向に向かう熱量も組織間で観応しあうであろう。JA大会決議を含めて「総組合員数の増加」への全中の意向が垣間見られる。正組合員の減少を准組合員の獲得で補なおうということである。農業振興がいわば国是となっているときに、如何なものであろうか。特定地域の知恵に委ねて求められたら支援する行き方の方が大局的な対応ではなかったろうか。都市農協の農業振興意欲は極めて強い。正組合員に見透かされるマイナスも考慮すべきではないか。冒頭の小池恒男氏は農協の長期にわたる農業振興対策を「地域農業振興計画」、「営農指導強化方針」など例を挙げて高く評価し、中央会制度の重要性を力説している。全中主導で2016年に全都道府県に設置した「担い手サポートセンター」、定期調査の「農協の農業経営調査」、農林水産予算の説明資料にも使われている「共同利用施設の設置年度別施設数」など、具体的な事業は派手さはなくとも高く評価される。全中の復権は、総花的な書き物ではなく、農業振興に資する具体的な事業をどれだけ仕組み実行していくか、にかかっているのではないか。
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