ストップ高になった卸の株価とコメ証券化構想【熊野孝文・米マーケット情報】2025年5月20日
株主優待ノート2025年上半期版でお米やおこめ券を株主優待として提供している企業を調べてみると62社もあった。産地銘柄を指定している企業で、どこの産地銘柄が多いかを見てみると新潟魚沼コシヒカリが10社、新潟コシヒカリが7社と新潟県産米が多い。それに続くのが富山県産米4社で、それ以外は北海道、宮城、山形、京都、滋賀、石川、千葉、茨城、愛知がそれぞれ1社ずつで、新潟県産が際立って多い。それよりも多いのは「おこめ券」で20社もある。おこめ券は堂島取引所の会員社も新規に口座を開設した顧客に対してプレゼントするというキャンペーンを始めたところもあり、証券になったコメの使い道が広がっている。
株主優待でお米がもらえるとあってか人気が出ているのは株式市場に上場しているコメ卸K社で、先週はストップ高になった。K社の株は1株6000円程度で推移していたが、2月ごろから動意づき、4月に入るとストップ高になるなど急騰し、5月12日には1万3200円まで上伸、出来高も急増した。K社の今年1月~3月の米穀事業の売り上げは前年同期比の1.3倍の311億6200万円、営業利益は約5倍の19億2900万円にもなったのだからストップ高になるのも無理はない。しかも2024年12月期の売り上げは1189億9800円だが、2025年12月期の予想は1550億円で360億円も増えると予想しているのだからびっくりしてしまうが、コメの値段が倍になったのだから、このぐらいの予想は当たり前なのかもしれない。
コメ不足→コメ価格高騰→コメ卸業績好調という思惑からK社の株を買った人も多いと思うが、もう一つ「株主優待」を楽しみにK社の株を買った人もいるのではないか。K社の株主優待は、100株以上かつ3年間保有している株主に対しては4000円相当の米穀商品が送られて来る。直近では、山形県産つや姫5kgと米粉商品3袋、こめ油500mlの詰め合わせセットが送られた。その年によって送られて来る銘柄は違うがブランド米ばかりである。さらに配当金は1株100円なのだから、この面でもこの会社の株主なる妙味があるのだろう。
以前、コメ卸の株価は長らく低迷し、巷では「電車賃」と揶揄されていた。1株160円で買えたのでこう揶揄されたのだが、現在の株価を見ると夢のようである。
株主優待で最も多い「おこめ券」は1枚額面500円で440円相当のコメを買える証券だが、今や1枚で買えるコメの量は大幅に低下した。それでも全米販のおこめ券は500万枚程度販売されており、自治体が子育て支援として提供する例や低所得者層に生活支援として提供する例もある。おこめ券を利用している会社の中には、堂島取引所の会員社である商先業者もいる。この会社はコメ先物取引の口座開設者に対しておこめ券をプレゼントすることにした。具体的には、コメ先物市場で10枚建てた新規口座開設者におこめ券を2枚プレゼントすることになっている。10枚の建玉を建てるとなると最低でも証拠金が40万円必要になり、おこめ券2枚では少な過ぎるように感じるが、景品表示法により、先物取引の景品は建玉の代金ではなく手数料代金により定められており、これが上限になっている。
試験上場中のコメ先物取引では、新潟コシを原資とした「e-ワラント債」を発券していた証券会社があった。これは小口の投資家向けの証券で、1口3万3060円から購入出来、新潟コシ先物が1000円値上がりすると1枚で20円の利益が得られた。値下がりすると損切になって利益が得られなかったので値下がりした場合でも利益が得られるプットオプションの販売を計画していたが試験上場での取引が廃止されてしまった。この証券会社の面白いところは試験的にe-ワラント債で新潟コシヒカリの現物を購入できるようにしたこと。この現物は大手卸が精米して証券会社の社員に新潟コシヒカリが提供され大好評であった。小口の証券で投資出来、さらに現物にも替えられることになれば先物取引に参加する投資家も増えるに違いない。
証券取引の総本山といえばJPX(日本取引所グループ;東京証券取引所・大阪取引所・東京商品取引所)で、ここで全国118産地銘柄のコメを証券化して売り買いして、その平均価格を先物市場に上場すれば価格変動に対するリスクヘッジ機能も果たせるようになる。さらにこのコメ証券は現物取引所で希望の産地銘柄を買えるようにして、それに加え政府備蓄米といつでも交換できるようにすることで家庭内備蓄機能を果たせ、財政負担を軽減させるだけでなく、消費者が買い溜めする必要もなくなる。まさに1石3鳥の仕組みといえ、市場流動性が高まりコメを産業化する礎にもなり得る。
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