成人式の花の需要はSNS時代の記念撮影文化【花づくりの現場から 宇田明】第77回2026年1月22日
花の生産が減り続けているのは、需要が縮小しているからです。
そのため、生産を回復するには、新しい需要の創出が不可欠です。
花産業の長年の悲願は、若者に花を買ってもらうことです。

その代表的な取り組みが、フラワーバレンタインです(本コラム第53回)。
日本では、女性が男性にチョコレートを贈る日として定着しているバレンタインを、本来の「男性が女性に花を贈る日」に戻そうと、2011年から活動が続けられています。
しかし、「バレンタイン=チョコレート」から「花」への転換は、東京では一定の広がりを見せているものの、全国的な認知には至っていません。
一方で、近年、成人式(二十歳の集い)で花束を手にした新成人の写真が、SNS上で目立つようになってきました。
青く染色したバラやカスミソウ、バルーンフラワーを組み合わせた大ぶりの花束を抱え、振袖やスーツ姿で写る写真が、「映える」記念投稿として拡散されています。
これらの花束は、式典そのものに使われるものではありません。
式典終了後の記念撮影や、SNSへの投稿を目的としたものです。
また、花を持つ新成人本人が購入しているケースは少なく、需要の主役は恋人や友人、家族です。
成人式で花を贈る行為は、まだ全国一律の習慣とは言えず、地域差もあり、まだら模様ですが、確実に広がりを見せています。
この動きの最大の特徴は、フラワーバレンタインのような業界主導の需要創出策ではなく、若者の側から自然発生的に生まれたムーブメントである点です。
ただし、この成人式需要には、重要な前提があります。
市場経済では「需要があって供給がある」のが原則ですが、実際には「需要を形にする」のは供給サイドの役割です。
成人式の花は自然発生的な流行に見えますが、実質的には小売の見せ方が若者の感性にはまった結果と捉えることができます。
花に関する知識がほとんどなく、日常的に花を購入した経験もない若者に対して、小売はInstagramやECサイト、花店のSNSで商品を提示しました。
そして、「これを持てば成人式らしい写真が撮れる」と、直感的に理解させたのです。
実際に人気を集めているのは、けばけばしい花色やバルーンフラワーなど、従来の花消費を支えてきたシニア世代が、まず手に取らないような商材です。
そこでは、「鮮度」「日持ち」などの花の伝統的価値や品質よりも、「非定番色」「非日常性」「ボリューム感」「写真映え」といった視覚的要素が評価されています。
すなわち、成人式の花は、鑑賞するためのものではなく、記念写真を完成させるための演出アイテムなのです。
この成人式の動きを、一過性のブームで終わらせてはなりません。
花を贈った、花を贈られたという成功体験を、フラワーバレンタイン、ホワイトデー、卒業式、送別会へと自然につなげていく必要があります。
そのためには、若者に花文化を教育するのではなく、「次も花を使えば、同じように特別な場面を演出できる」と示すことが有効です。
成人式の花需要は、まだ小さな兆しにすぎません。
しかしこれは、若者が自ら見つけた「花の使い道」であり、業界の外側から生まれた貴重な需要です。
さらには、新しい需要を創出するためのヒントを花業界に与えてくれています。
それは、花業界に必要なことは、若者に花を理解させることではなく、花を知らない若者の価値観を起点に、商品と使い方を提案することです。
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