財政・金融政策では経済成長しない-エコミストがアベノミクス批判2016年9月27日
農林中央金庫が9月12日に開いた金融経済トップセミナーではBNPパリバ証券のチーフエコノミストの河野龍太郎氏が基調講演し「日本の経済成長率が低いのは実力が低いから。もっと財政政策、金融緩和をすれば経済の体力そのものを奪うことになる」などと批判した。
河野氏は安倍政権下での2013年から16年4-6月期までの平均成長率は「わずか0.7%しかない」と指摘。「さんざん文句を言った民主党政権の3年間の平均成長率1.3%よりも低い」ことを強調した。
金融緩和で株価は上がっているが「自分の懐具合は全然良くなっていないという印象を持っている人が多いと思う。その通りで株価が実体経済を反映していない」。
河野氏は日本経済の潜在成長率は1980年代半ばは4%台だったが、その後急低下していき現在ではゼロ近くまで下がっているデータを示した。
そうなると成長率0.7%といっても実力ゼロにくらべれば高いので景気は悪くないということになる。一方、実力がゼロだからわずかなショックでもマイナス成長になってしまう。が、その次の四半期にはわずかでもプラス成長になるということを繰り返す最近の経済状況を説明した。
実際、経済成長はほとんどしていないなか、失業率は徐々に下がり7月には3%まで低下した。河野氏によれば失業率3.7%程度が完全雇用の状態だと指摘し、現在はそれよりも低い状態にあるとして、安倍総理が参院選で強調した雇用の改善は確かに実現していることになる。ただし、経済の実力がゼロまで下がっているので「安倍政権が掲げている成長率2%目標達成はかなりほど遠い」。
◇ ◇
基本的に潜在成長率を決めているのは労働力、資本投入、イノベーション(全要素生産性)の3つ。日本は労働力が減少していく悪影響をイノベーションによってカバーするシナリオを描いてきた。イノベーションによって生産性が高まり収益性が高まれば資本投入も高めていける。
ところが最近はイノベーションの部分が進まず潜在成長率をマイナスにする要因になっているのだという。その要因が「財政政策や金融政策のやりすぎでイノベーションが起きなくなっている」と指摘した。金融政策で金利を低下させるのは、「将来の需要を先食いするだけ」。財政政策や金融政策は一時的に景気を押し上げるだけで「潜在成長率を高めるものではない」と強調した。
また、金融緩和が最近の消費低迷の要因だと日銀を批判。2014年の消費低迷は消費増税が原因だが2015年は円安によって輸入物価が上昇して実質購買力が抑制されたためであり、2016年に向かうなかでは原油価格が下落したがそれを円安が相殺した。年明けには円高になったが、今度はマイナス金利の導入で日本経済は厳しいとの見方が消費抑制を招いたなどと指摘し「安倍総理と黒田日銀総裁は、積極的な金融緩和が円安を通じて景気を刺激すると考えていたがそうはならなかった。誤算だった」などと話した。
トップセミナーではそのほか三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ債権ストラテジストの石井純氏、SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏、みずほ証券金融市場調査部長の寺澤聡子氏らが講演やパネルディスカッションを行った。
(写真)「世界経済の見通し-アベノミクスの帰結は?」と題して基調講演した河野龍太郎氏
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