東大が「木材利用システム学」設立 農林中金の寄附で2016年10月4日
東京大学アジア生物資源環境研究センターは農林中央金庫の寄付で「木材利用システム学」部門を10月1日に設置し、その開設記念式典と記者会見を3日に行った。
温室効果ガスの吸収源である木質資源の利用は、地球環境への貢献とともに、里山の活性化など地域経済を支えるとして、世界的にも地域の木材利用拡大への関心が高まっている。
日本の森林は戦後の大造林から70年近く経ち、多くが有効な木材利用のための伐期を迎えている。しかし、人口減少で住宅着工戸数は減少し、今後もマーケットが縮小していく見込みで新たな木材利用の拡大を通じて林業の維持・拡大を図っていく必要がある。
そのために新設された木材利用システム学研究室では、アジア地域における木質資源の持続的理想循環システムの構築を目的として木材利用に関する環境評価、経済効果、マーケティング、政策などの研究を行う。それらの成果に基づき、自然科学と社会科学の融合による木材の加工・流通・利用に関する新たな研究領域の確立をめざすという。国産木材は海外でも評価が高いといい、輸出も含めた新たな需要拡大策も課題になる。
同研究室の教授も兼務する井上雅文アジア生物資源環境研究センターによると日本の木材に安心感があり、日本のヒノキを使った住宅建築がステータスになっている他、子ども用の家具も評価が高いという。
そのほかCLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー、直交集成版)などの新規木質材料利用促進、非住宅分野での木材利用、土木資材、エネルギー分野での木材利用促進などもテーマとなる。
農林中央金庫は3年間で1億3500万円を寄付。この研究によって森林・林業の学術的価値の評価と専門的な人材育成など期待する。
同時に農林中央金庫はこの研究部門の新設に合わせ幅広く木材関連業者が参加する「ウッドソリューション・ネットワーク(WSN)」を設立した。農林中央金庫の宮園雅敬代表理事副理事長(食農法人営業本部長)は今回の東大への寄付について「木材利用のブレークスルーが生まれないかと協力した」と話し、WSNの設置は「木材産業関連企業と大学を緊密に結ぶプラットフォームとして作った」とし研究成果が現場の課題解決につながることを期待した。
○ウッドソリューション・ネットワーク参加企業・団体(2016年10月3日、五十音順)
(株)イトーキ
(株)ウッドワン
王子木材緑化(株)
(株)岡村製作所
兼松サステック(株)
コクヨ(株)
(株)J-ケミカル
清水建設(株)
ジャパン建材(株)
(株)ジューテック
すてきナイスグループ(株)
住友商事(株)
住友林業(株)
全国森林組合連合会
双日建材(株)
大建工業(株)
中国木材(株)
ホクシン(株)
(株)農林中金総合所
(事務局)農林中央金庫
(写真)農林中央金庫から研究室の木製看板も贈呈。左から井上雅文東大アジア生物資源環境研究センター教授、堀繁東大同センター長、宮園雅敬農林中金代表理事副理事長、山田秀顕農林中央金庫常務理事。
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