「気候変動の社会的リスク」でセミナー 日本共済協会2016年11月22日
JA共済連や全労済、コープ共済など、協同組合共済事業の統一組織である日本共済協会は毎年開催している「日本共済協会セミナー」を、11月21日に東京の都市センターホールで開催。共済事業に携わる各団体の役職員をはじめ170名が出席した。
今年のテーマは「気候変動の社会的なリスク――最新の研究から見る温暖化の影響と対策――」。
講師は、1992年以降、国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」に専門家として参加し、第2次から第5次の評価報告書の主執筆者、総括主執筆者を努め、気候変動問題の世界的研究者である、三村信男茨城大学学長。
三村学長は、「世界の温暖化対策の動向」について1992年以降、そして京都議定書から2015年のパリ協定(COP21:国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)の合意までを振り返り、パリ協定は△加盟196カ国、140カ国の首脳級が参加、△2020年以降の気候変動対策の目標で合意、△産業革命前に比べて「2℃以下」に気温上昇を抑制。さらに「1.5℃」への抑制に努力、△「全ての国の参加」で、緩和、適応に取組む(「」内は強調)ことにしたことを評価した。
さらに「気候変動の現状と将来予測」では、最近日本でも毎年のように気象災害が起きていることなどをあげ、△気候システムの温暖化は明らか、△海洋の温暖化も明らか、△気候システムの変化には、今後数百年から数千年継続するものもある、△気候変動の影響はすでに現れている、というのがIPCCのメッセージだとした。
そのうえで、気候変動に対する対策としては、△温暖化の進行を抑える対策である「緩和策(CO2等の排出削減策)」と、△気候変動の悪影響に備える対策である「適応策」があると指摘。日本でも緩和策だけではなく、「適応策の計画と実施が必要になっている」と語った。
そして、△最近の気性は極端化し、世界的に温暖化の影響が顕在化している、
△COP21「パリ協定」は、長期的な温暖化対策を基礎を置き直した。今後、協定実施の体制を具現化すべき、
△排出削減策(緩和)はゼロ排出社会に向かっている、制度・経済・技術対策がそろってきた、
△適応策も必要。夏の猛暑、豪雨、土砂災害、農業被害など日本にも影響は表れており、今後、防災対策や適応策を強化すべき、
△緩和策は脱炭素・CO2ゼロミッション社会につながり、適応策は安全・安心な気候変動レジリエント(強靭な)社会につながる、
△パリ協定は、気候変動への対策が他の課題解決と融合して持続可能な未来を築くポスト炭素社会の可能性を開いた、とまとめた。
講演そのものは90分弱だったが、その内容は深く多岐にわたり、これからは地球規模で気候変動について考え、いかに行動すべきかを、私たちも真剣に考えなければということを問われるものだった。
(写真)講演する三村学長
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