法律で組合利用義務 仏・独・蘭と日本の農協の違い鮮明2018年8月6日
・農中総研がレポート
農林中金総合研究所(農中総研)はこのほど、フランス、ドイツ、オランダの農協、協同組合銀行の制度と実情についてのレポート(総研レポート「フランス、ドイツ、オランダの農業協同組合、協同組合銀行の制度と実情」)をまとめた。日本の農協との比較分析によって、現在進められている農協の自己改革の議論の際、基礎的な資料として活用できる。要点を紹介する。
レポートは農水省の調査事業を受託し、農中総研がまとめた調査報告書に加筆・修正したもの。現地調査としてフランスでは農業省、農協の全国組織であるCoop de France、協同組合銀行クレディ・アグリコル・グループの全国機関CASAと地方金庫、オランダでは協同組合銀行ラボバンクとティルブルフ大学でヒアリング調査した。これに同研究省が独自で調査したドイツの協同組合銀行、フランスの農協や研究所の調査なども含む。
(表をクリックするとPDFファイルが開きます。)
EUにおける調査3か国の農協の特徴を挙げると、(1)農協加入率が3か国とも80%以上、(2)農協の販売事業のシェアはオランダ68%、フランス55%、ドイツ45%で、いずれもEU全体の40%を上回る、(3)ドイツ以外のフランス、オランダは専門農協のみ、などがある。
一方、3か国の法制度をみると、その違いが大きい。オランダは協同組合に関する規定が民法典に置かれ、規定されている内容は非常に少ない。ドイツでは全ての種類の協同組合に共通の根拠法があるが、種類別の協同組合法はない。またフランスでは協同組合の共通法と種類別で、それぞれ協同組合法がある。
組合員資格は、オランダが定款で規定し、ドイツは地域を条件とする場合のみ規定。フランスは農林漁業者および農業に関連する団体等となっている。事業内容はオランダ・ドイツともに保険業を除き、どのような事業も可能で定款で規定するが、フランスは具体的な業務内容を政令で規定する。つまり、組合員・事業など、日本より自由度は高く、定款自治の範囲も広いため、環境の変化に個々の農協が対応しやすい。
ただ組合員の事業利用の自由度は高くない。日本では農協法で、組合員に対して利用を強制してはならないことが明記してあり、専属利用に関する規定は廃止になっているが、オランダでは、組合員からの出荷について定款で規定でき、組合員に全量出荷義務を課するケースもある。
ドイツも同様で、酪農協とワイン生産者組合の模範規定では、組合員は全量出荷の義務を負い、出荷しない場合は組合を脱退しなければならない。フランスもペナルティを定款で規定できる。
またオランダでは農協を監督する機関も許認可する機関もないが、ドイツは裁判所が許認可し、監査中央会が監督する。従ってドイツ、フランスの農協は監査中央会への加盟と、監査を受けることが義務付けられている。また、ドイツでは、他の法人との合併、株式会社など他の法人への組織変更が可能で、その逆もできる。
このように、農業経営体規模や、経営形態が異なり、構造面での差異が大きく、それが農協や協同組合銀行のあり方にも影響を与えていることが分かる。そのことを指摘した上でレポートは、「これらの国の経験を日本の農協がそのまま模倣することは難しいであろうが、農協において、組合員が今後の方向性を検討する際には、参考にすることも必要であろう」と結んでいる。
(関連記事)
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