TNFDの環境開示は何から始めるか 農林中金と八千代エンジニヤリングがセミナー2025年1月24日
建設コンサルタントの八千代エンジニヤリング(東京)は1月23日、農林中央金庫、農林中金総合研究所との共催でセミナー「TNFDを始める企業必見!環境開示の成功事例と課題解決のノウハウ」を開いた。企業や金融機関が自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を評価・開示する国際的な枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示は、将来的に開示が義務化される可能性が高い。そこで、事業のどこから開示するか、企業の事例を交えながら解説した。
八千代エンジニヤリング 山中健二郎取締役執行役員事業開発本部長
TNFDに登録する日本企業は24年10月現在で133社と1年弱の間に1.6倍に増え、関心が高まっている。開示項目はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と共通だが、TCFDが気候変動に対象を絞っているのに対して、TNFDは「気候変動を含む自然資本全般」と幅広く、開示のハードルが高い。
セミナーでは、最初に八千代エンジニヤリングの山中健二郎取締役執行役員事業開発本部長が同社のサステナビリティコンサルティング事業などを紹介。続いて、農林中金の食農法人営業本部営業企画部の波多信宏サステナブルビジネスグループ長と農林中金総研リサーチ&ソリューション第2部の岡添巨一主任研究員が成功事例と課題解決の方法を講演した。八千代エンジニヤリングの吉田広人事業開発本部サステナビリティサービス部マネージャーを加えたパネルディスカッションも行った。
波多氏は課題として「バリューチェーン、サプライチェーンを含めたすべてを開示することは難しい」と指摘。事例を紹介し「分析・開示の対象範囲は、事業規模、情報収集のしやすさ、事業の代表制や主要製品、自然への依存影響度などから企業独自で優先順位付けをしても構わない」こと。評価・分析を行うためのツールは数多く存在しており「事業内容や活動地域にあわせて選定」することを勧めた。
農林中金総研 岡添巨一リサーチ&ソリューション第2部の主任研究員
岡添氏はTNFD開示におけるリスク・機会と対応策を講演した。開示を始める条件として「上手くいかない場合に修正する体制を構築」していることや、取締役会の承認など「経営者が理解している」ことなどを挙げた。次に、自然への依存と影響の分析に基づくリスクと機会を洗い出し、対応策の検討を絞り込むこと。特に重要なものは「指標・目標を設定し、目標達成の対応策を具体化する」ことを解説した。
パネルディスカッションでは、各氏からは「最初に環境との関りを知り、優先的な場所を選定する」「指標の何で貢献するかを定義する」「リスクと機会を見つけることは難しく、行ったり来たりする方が結果的に効率的」などの発言があった。また「地域と企業が連携して課題を把握し、一緒に解決する。特に日本では水資源が取り組みやすい」「(課題解決に取り組むことで)社内のエンゲージメントが上がり、企業価値向上にもつながる」といったアドバイスも送った。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日