【27年産米 米販売最前線】 精米5キロ「970円」の特売も 新米出回り 安売り熾烈2015年9月1日
1円でも安くセールや値引き本紙が独自店頭価格調査
・調査は1都3県15地区の51店舗
・在庫消化優先で新米価格も低迷
・ごはん一杯たったの13円
米の産地では主食用米の需給改善に懸命に努力しているが、消費地では26年産米の過剰を背景に驚くほどの安売りが行われている。本紙は実態の一端を探ろうと8月22~23日の土日に店頭での最低価格調査を行った。その結果、土日限定とはいえ「精米5kg970円」の商品も店頭に並んでいた。客寄せのための目玉商品だとしても、今までにない低水準だ。これでは需給調整に取り組む産地もがっくり肩を落とし生産意欲もなくすだろう。米の適正価格について理解を広めることも必要だ。
本紙では昨年も8月から9月上旬にかけて米価下落の実態を調べる調査を行った。方法は量販店のチラシなどを収集し、おもな産地銘柄ごとに価格水準をまとめた(26年9月20日号)。
その結果を改めて振り返っておくと、昨年の同時期に量販店が目玉品と名打った5kg精米価格の銘柄別最低価格帯は1370円から2200円だった。
(写真)期待された新米だが...
◆調査は1都3県15地区の51店舗
しかし、これはあくまでもチラシに掲載された商品のため、今回は店頭に出向き、5kg精米のその店舗での最低価格商品を調査することにした。期間は8月22日(土)、23日(日)。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の15地区51店舗を調査した。
その結果をまとめたのが表である。
【表 首都圏量販店の「精米5kg品」の最低価格調べ(8月22~23日、首都圏量販店、本紙調べ)】

精米5kgの最低価格が「1000円以下」の店舗は6店。970円が最低で産地銘柄は「秋田あきたこまち」と「茨城コシヒカリ」だった。店内に「1000円!」と大きく貼り出してあった店は「地域最安値の店」もアピールしていた。
表には地域での熾烈な安売り合戦があまりにも分かりやすく示されている。900円台を目玉商品とした埼玉・浦和地域ではA店が999円で売り出せばB店は998円を打ち出していた。埼玉・ふじみ野市内では同じ銘柄を1円違いや4円差で販売するなど、まさに「1円でも安く!」の実態が示されている。
また、調査期間中、新米を除いて全品2割引セールを展開していた量販店もあった。表のうち価格が1104円、1171円などとなっているのがその例である。そのほか、2袋買いで値引き実施や、300g増量などの販売もあり、それらを5kg商品として換算すると、その店舗での実質的な最低価格となる例も見られた。さらに指定の商品を買うと100円分のポイントを付与するといった販売促進策も行われている。
(写真)特売のチラシ
◆在庫消化優先で新米価格も低迷
今回は同時に新米の販売価格も調査した。価格帯は1380円から2000円前後となっている。【クローズアップ コメ流通最前線】で米穀新聞社の熊野記者は卸業者の話として、量販店に対して"新米セールで関東のあきたこまちを5kg1380円で販売できるよう提案していたが、競合卸が同値でコシヒカリを提案してきた"とのコメントを紹介している。
【表 27年産米の5kg精米品の販売価格(8月22~23日、首都圏量販店、本紙調べ)】

表から分かるように本紙調査でも「茨城あきたこまち」1380円とともに「宮崎こしひかり」1380円が店頭で確認された。熊野記者は過剰な26年産米の在庫消化が優先されていることをふまえ、「白米の安売り合戦は収束するどころか新米の出回りでますます拍車がかかっている」と指摘している。今回の調査からその実態の一端が浮かび上がった。
農水省のまとめによると27年産の主食用米の作付面積は過剰作付けが解消され、生産数量目標の換算面積140万haより8000ha減少するとしており、林農相も「需給が引き締まって価格形成にもいい影響が与えられるのではないかと期待をしている」と話した。
価格形成が適正に行われ生産者の所得増加に結びつける販売努力がJAグループにも求められるが、今回の店頭調査結果が示すような販売価格の実態があると、適正価格への理解を消費者に広めることも重要になる。
図は農水省が作成している「茶わん1杯のお米の値段」である。茶わん1杯の精米の量は65g。5kgの精米は約77杯となるので「5kg2000円」の米を買った場合、ご飯1杯の米の値段は約26円になるとして、120円の缶コーヒーはご飯4.6杯に相当するなどと説明している。

※農水省資料を改変
◆ごはん一杯たったの13円
この図は5kg2000円が前提。農水省の「米のマンスリーレポート」によると今年6月の小売価格の平均は5kg精米価格は1819円となっている。この価格ではご飯1杯の米の価格は約24円となる。もっと分かりやすいのが今回調査で明らかになった「1000円」の商品。これならご飯1杯なんと13円。JAグループはこうした実態をもっと知らせていくべきだ。
(関連記事)
・クローズアップ 【27年産米 米流通最前線】価格変動のリスク対応へ 取引市場の整備を (15.08.31)
・クローズアップ 【米価暴落】空前の低米価 農家経営を直撃 (14.09.22)
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