Iターンで維持を 棚田学会がシンポ2015年8月7日
日本の稲作文化を象徴する棚田はいま、担い手不足によって維持管理が難しくなっている。棚田にかかわる後継者問題について、棚田学会(千賀裕太郎会長=東京農工大学教授)が7月31日、東京でシンポジウムを行った。
シンポジウムで事例報告したのは、静岡県松崎町の石部地区棚田保全推進委員会、新潟県十日町市地域おこし実行委員会、和歌山県那智勝浦町の色川地域振興推進委員会の3か所の棚田維持の取り組み。
石部棚田を守る農家の平均年齢は77歳。将来も維持することは不可能で、「棚田の守り人」として大学、企業と連携し、積極的にボランティアを受け入れてきた。
そのつなぎ役を果たしたのが、1年前に東京から移住してきた、地域おこし協力隊の有馬稔さん(45)。地区の活性化や定住に向けた活動の主要な部分として棚田の維持を位置付ける。
新潟県十日町市の山間部にある池谷集落は、昭和30年代の37戸が平成18年には6戸に減少した。集落消滅の危機を感じた住民が、平成16年の新潟県中越大震災の後、ボランティアの受け入れ団体として地域おこし実行委員会を設立。
復興デザイン計画で、(1)消費者と直接つながる農業、(2)本音の付き合いでイベント交流、(3)後継者(外部人材)が暮らせる環境整備―の3つを掲げた。これにそって空き家民家の回収、農業インターン生の受け入れ、定住希望者への支援などを具体化した。
この結果、27年までに移住者5人とその子どもが集落に加わった。実行委員会の山本浩史代表は「100年続く集落をめざし、日本を元気にする」と張り切っている。
和歌山県那智勝浦町の色川地区は、人口の4割がIターンという珍しい地区。同地域振興推進委員会は棚田を「くらしの場」と位置付ける。これに共鳴した移住者がIターンしてきた。同委員会の原和男会長は「不便な棚田だが、そこに豊かさがある。崩れた石垣を直す時など、先人の技術、苦労の跡が見える。過去とのつながり感。そこに魅力を感じる若い人が増えている」と言う。
なお棚田学会は同日、第11回石井進記念棚田学会賞の受賞式を行った。
【第11回石井進記念棚田学会賞受賞者】
▽うきは夢酔塾、つづら棚田保全協議会、つづら棚田を守る会(福岡県うきは市)
▽特定非営利活動法人鴨川現代バレエ団(千葉県鴨川市)
▽いこま棚田クラブ(奈良県奈良市)
(写真)棚田の維持管理で意見交換する棚田学会
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