米:CE品質事故防止強化月間
自主マニュアルで全職員の意識を統一 JAみい 北野カントリーエレベーター(福岡県)2017年8月8日
特集:カントリーエレベーター品質事故防止月間(8月1日~10月31日)
・実行したことは必ず記録を残す
JAグループ米穀事業の集荷・販売の拠点施設であるカントリーエレベーター(CE)では、出来秋の収穫期を前に、荷受へ向けた準備が着々と進められている。全国の大規模乾燥調製貯蔵施設の管理・運営改善に取り組む全国農協カントリーエレベーター協議会、JA全農、公益財団法人農業倉庫基金の3団体は、毎年8月1日から10月31日までの3カ月間を「米のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間」に定め、事故防止の徹底を呼び掛けている。
今回は、福岡県のJAみい北野CEを訪ね、CEの運営、事故防止の取り組みなどを取材した。
(写真)日本一きれいな北野カントリーエレベーター
◆環境に恵まれた筑後川流域の農業地帯
福岡県のほぼ中央、筑後平野の北部に位置し、若干の丘陵地はあるものの、南は筑後川に面した肥沃な水田地帯にJAみいはある。この地の年間の平均気温が16℃、年間降水量2000ミリ程度と、土壌(地力)・水利・環境ともに恵まれた農業地帯だといえる。
JAみいは平成3年に当時の小郡市・北野町・大刀洗町のJAが合併して誕生した大型JAだ。その後17年2月に北野町が久留米市と合併したため、現在では2市1町(久留米市・小郡市・大刀洗町)がその管内となっている。
(写真)福岡県内の北野カントリーエレベーターのおよその位置
管内には、東西を大分自動車が、南北に西鉄天神大牟田線と甘木線が、さらに国道3号線と経済および生活に必要な主要県道が縦横に走っていることもあり、近年は、福岡や久留米都市圏のベッドタウンとしての住宅用地の造成が急速に進んでいる地域でもある。
農業では、環境に恵まれていることもあり生産性が高く、米・麦・野菜・畜産など多彩な農業生産が行われている。なかでも野菜は県内有数の産地となっている。
JAみいの農畜産物の販売事業に占める米の販売高は約10億円、麦・大豆・採種を合わせると約19億円となっており、野菜に次ぐ重要な農産物となっている。
管内には米麦の乾燥調製貯蔵施設として、今回紹介する北野カントリーエレベーター(以後、CEと表記)のほかに、吹上CE、八坂CE、大刀洗CEがあり、いずれも同一メーカー製の施設となっている。同一メーカー製なので、「どのCEに行っても操作方法が基本的に同じなので、技術交流がしやすく、レベルアップにつながる」と床島正浩同JA営農部農産課課長はいう。交流がないと「先輩から受け継いできたものだけで操作するので、善し悪しの判断がしにくい」が、他のCEと交流することで操作を含めた運営管理の「善し悪しが判断できるようになる」からだ。
また、4CEとも「利用組合方式」での運営となっている。ちなみに北野CEの貯蔵サイロは小麦が360t1基、大麦300t1基、籾300t8基(2400t、そして鋼板制90tの間隙サイロが1基という構成だ。
◆日本で一番「きれい」なCE
北野CEの利用状況を銘柄別にみると、米では「ヒノヒカリ」が101haともっとも多く、次いで県推奨銘柄である「夢つくし」が67ha、「元気つくし」が32haとなっている。床島課長によれば「作付品種の誘導をおこないながら荷受時期を分散するようにしている」のだという。
麦類では「シロガネコムギ」が94ha、「チクゴイズミ」が82ha、「はるか二条」が95haとなっている。
近年、生産者の高齢化や米価の低迷などによって離農する人が少しずつ増えてきているので、利用面積が少しずつ減少しているという。ただ、ここではそうした農地が放棄地にはならずに、大規模化をめざす野菜農家がハウス栽培などに積極的に利用しているという。福岡や久留米という都市圏が近いこともあって、「米から野菜へ」この地の農業がシフトしているということだ。
そうはいっても北野CEの周囲には陽の光を一杯に浴びてすくすくと成長する稲の青緑の葉が眼に眩しく、やはり農業の基幹は水田にありということを改めて感じた。
周辺の状況を見せてもらうために上村忠紀同JA北野CE主任の案内で、屋上に上がった。そのとき階段を登りながら気が付いたのは、小麦の乾燥調製中にもかかわらず、施設の内部が「埃がほとんどなく、きれい」だということだ。こうした施設に入るとズボンが白くなり手が汚れることが多いのだが、まったくそういうことがないのだ。
同行していただいたJA全農ふくれん農産部の指出安光上席アドバイザーは、「ここは福岡一たぶん日本で一番きれいなCEですよ」という。指出さんは全国農協CE協議会の副会長として活躍されてきた経歴があり、全国のCEを見てきているので、そうした経験を踏まえての評価だ。JAみいの4つのCEでは、「どこでも、事務員さんも含めて、自主的にCEをきれいに掃除をすることが、伝統になっている」ので、「きれいは当たり前」だという。
(写真)肥沃な農業地帯が広がる(北野CEの屋上から)
◆CEごとに「運営管理マニュアル」作成
全国の各県でCEは食品を扱う施設なので、清掃や美化のコンクールなどが開催されおり福岡県でも取り組まれてきたが、全国でもトップクラスの「きれいなCEが多い」こともあって、現在では美化から運営管理に重点を置いた「運営管理・環境整備コンクール」として実行されている。北野CEはこのコンクールになっても、常に優秀な成績を収め、数多くの表彰を受けている。
このコンクールの審査でもっとも重視されるのが、「運営管理マニュアル」がきちんと実行されているかどうかだ。このマニュアルは、「県内一律」のマニュアルではない。基本的に全CEに共通部分はあるが、県内JAの各CEが自分のところの施設の状況に合わせて、作業の安全性を確保するために、自分たちで自主的に作成したマニュアルで、昨年度から実行されているという。
この自主的なマニュアルに基づいて、きちんと運営管理されているかどうかが審査される。当然だが、自主的なマニュアルが未作成であれば、どんなにCEがきれいに美化されていても表彰されることはない。
自主マニュアルを作成し、それに基づいて実行したことを記録することは、審査の重要なポイントではあるが、記録することでみんなが問題意識を共有でき、「後任者にきちんと渡して引継ぎができる」と上村主任はこれの大事さを強調する。
最後に改めて品質事故防止のために日常的に重視していることはと聞いた。「穀温管理です」とすぐに返ってきた。そして穀温計測は2人で行い、データは必ずグラフ化して、視覚的に誰にでも分かりやすくしている。これも自主マニュアルに書かれていることだ。
日常的になっている掃除と自主マニュアルによる運営管理が職員さん全員の共通認識となり、日々実行されている。これに勝る品質事故防止対策はないといえる。
(写真)JAみいの床島課長(左)と北野CE職員の皆さん。(左から)上村忠紀・野村歓敬・堤清一郎・橋本大樹・前原良子・平田美和・平川隆一(写真なし)の各氏
(関連記事)
・「乾燥能力に応じた計画的な荷受けとオペレーターの適正な人員配置により品質事故防止を」(17.08.08)
・事故防止は「基本に忠実な行動」から(下) 現地ルポ・JA会津よつば(16.08.10)
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