【クローズアップ 中酪11月用途別販売まとめ】 北海道4%増産続く一方で飲用低迷 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年12月16日
生乳需給緩和から年末年始の生乳廃棄懸念が高まる中で、中央酪農会議は16日までに11月用途別販売実績をまとめた。北海道は前年度同期比4%台の増産が続き、関東も3%増となった。業界に加え農水省も緊急に需要拡大を呼び掛けている。
■暖冬や頭数増影響
生乳生産に連動する中酪の11月用途別販売実績は、全国の約6割を占める北海道が4%台の伸びとなり、2番目に生乳生産が多い関東3%増と、両地区とも高い伸びが続いていることが分かった。
特に北海道は、暖冬に加え粗飼料の品質が良く搾乳環境が整い、乳牛増頭も増産につながっている。本来、生産基盤の点からは好ましいが、当面の需給緩和局面の中では逆に乳価下落となって酪農家の経営に跳ね返ってきかねない状況だ。
■需要は飲用、発酵乳苦戦
増産でも販売好調なら問題はない。だが、大きな課題は、コロナ禍で需要が伸び悩む中で増産基調が続き需給ギャップが拡大することだ。
Jミルクは、10月末に喫緊の課題である年末年始の生乳廃棄回避に向け財政支援をセットとした需要拡大、生産抑制を呼び掛けた。こうした中で、11月の生産動向と用途別販売実績に注目が集まっていた。生乳需給改善へ業界挙げて懸命の努力を続けているが、11月の実績は増産傾向が続く一方で、用途別販売の主力の飲用向け伸び悩みが鮮明となっている。
中酪11月用途別販売実績は、主力の飲用牛乳等向けが前年同期比97・6%、このうち北海道は91・8%と落ち込み、首都圏の大消費地を抱える関東は101・5%と上回った。北海道は、生乳最需要期の夏場も道外移出が不振で、道内の乳製品在庫が増大していた。11月になってもこの傾向が続いている。
乳製品過剰で特に深刻なのが脱脂粉乳。需給はヨーグルト原料などになる発酵乳の動向が大きい。発酵乳等向けは同97・1%、うち北海道は93・5%と前年割れが続く。ヨーグルトは、健康志向や免疫機能などから需要増が続いてきた。最近は消費足踏み状態で前年割れからなかなか脱しきれない。それが脱粉在庫増にも直結している。
生乳需給では好材料もある。生クリームなどの液状乳製品は同106・5%の伸び。コロナ禍でもホテルなど業務用需要が徐々に回復してきた表われとみられる。
◎主要地区の11月用途別販売実績
(前年度同期比、%)
・北海道104・4
・東北 99・4
・関東 103・0
・東海 101・7
・九州 101・7
・全国 103・2
■ホクレン12月上旬4・6%増
問題は今後どうなるのか。やはり、大きなカギを握るのは大産地・北海道の動向だ。
直近の数字は、ホクレンの12月上旬受託乳量だが、前年度同期比104・6%となっている。道内は関係機関挙げて消費拡大と生産抑制を呼び掛けているが、今のところ搾乳牛の増頭などが増産を後押しする構図だ。
4・6%増は、今年度に入って、9月中旬と並び最大の伸び率になっている。4旬連続で4%台の高い伸び率が続く。ホクレン支所別では帯広同105・1%、中標津106・9%となり、十勝、根室の道内でも屈指の道東の大型酪農地帯の増産が続く実態が鮮明となった。
■農相も需要拡大に言及
12月下旬の2022年度畜産酪農政策決定を控え、14日の会見で金子原二郎農相も年末年始の生乳需給危機に関連し「年末年始は例年以上に需給が緩和し、処理不可能な生乳の発生が懸念されている」と言及。関係業界と連携して牛乳・乳製品の消費拡大に取り組むことを強調した。
農水省ホームページでの需要拡大の情報発信に加え、全国に広がりつつある牛乳でコクを付け塩分を抑えた乳和食の普及を促す。業界と連動した国の一層の対応強化が求められている。
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