放牧牛を担保に動産担保融資 AIモニタリングシステムの有効性を検証 東工大など共同チーム2021年7月28日
東京工業大学、信州大学、電通国際情報サービス、ファームノート、テクノプロテクノプロ・デザイン、ソニーグループの共同プロジェクトチームは、沖縄県竹富町黒島のさくら牧場で、同チームで開発したエッジAI技術とLPWA技術による放牧牛AIモニタリングシステム「PETER(ピーター)」の動産・債権担保融資(ABL)への適用に関する実証実験を開始した。2022年3月末まで実施予定。
「PETER」の首輪デバイスを装着したさくら牧場の放牧牛
同実証実験は、東京工業大学COIの『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点のもと、鹿児島銀行の協力を得て実施。個体を遠隔からモニタリングするPETERの活用により、適切・効率的なABLの実行に繋がり、持続可能な畜産経営への貢献が期待される。
畜産物を担保とするABLは、畜産経営に貢献するものとして注目されているが、放牧を取り入れた畜産を対象とする場合、融資に必要な個体数の確認や個体ごとの状況把握に時間やコストがかかるという課題があった。
共同プロジェクトチームは、2019年4月から信州大学農学部で、肉用牛の放牧飼育管理に焦点を当て、アニマルウェルフェアに配慮しながら、その管理作業を低コストで実現する仕組みの実証実験を行ってきた。これまでに、放牧牛に首輪型センサを取り付け、放牧牛の飲水・摂食、伏臥位、立位、歩行などの複雑な行動や姿勢の情報をAI処理により推定する技術検証を実施し、放牧牛の遠隔モニタリングを行う首輪デバイスとクラウドアプリケーションなどで構成するシステム「PETER」を開発した。
今回の実証実験は、この取り組みを、放牧牛を担保とするABLに応用する試み。従来から畜産ABLに積極的に取り組む鹿児島銀行と、放牧を中心に飼養を行っているさくら牧場が同実証実験に協力することで、銀行のABL業務と畜産経営の両面からPETERの放牧牛ABLへの有効性を検証し、追加すべき機能の洗い出しや課題の抽出などを行う。
同実証実験では、さくら牧場の放牧牛10頭にPETERの首輪デバイス(PETERエッジ)を装着し、アプリケーションで放牧牛の遠隔モニタリングを実施。PETERエッジで計測した放牧牛の位置データと活動データに加え、牧場内の環境データをクラウドに集約し(PETERクラウド)、銀行がABL業務を行う上で有効なデータ項目の抽出とPETERクラウドを介した銀行へのデータ提供のあり方を検証する。
共同プロジェクトチームが開発した放牧牛群管理システム「PETER」は、PETERエッジのAI分析アルゴリズムで、放牧牛の位置情報、歩行や摂食、反芻、休息など牛の行動や状態を推定し、データ量を圧縮してソニー独自のLPWA技術である「ELTRES」でクラウドに送信する。PETERのアプリケーションは、畜産農家のヒアリングに基づいて優れたユーザビリティを確保している。
共同プロジェクトチームが目指す将来の畜産イメージ
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