「地獄のように苦しみ、廃業した」 酪農・畜産危機打開へ緊急支援求め農水省に要請 農民連2023年3月29日
生産資材の高騰などで酪農・畜産の生産者が危機的な経営状況にあるとして、農民運動全国連合会(農民連)などは3月29日、農水省に対して経営が存続できるよう緊急的な経営支援を求める要請を行い、生産者からの要望書や約8万1000人のオンライン署名を提出した。同団体は、年度末を迎えて廃業・倒産の危機にある農家が激増する恐れがあるとして、同団体は一刻も早く実効性のある対策を求めている。
酪農・畜産の生産者への緊急支援を求めるオンライン署名を提出(衆議院第二議員会館で)
ウクライナ危機などによる飼料高騰で畜産農家が厳しい経営に直面する中、農民連の要請行動は今回で6回目とあり、新たに農家から集めた258人分の個人要望書を提出した。農家からの自由記載欄には、「先週、廃業した。地獄のように悩み、苦しみながら、決断した」「運転資金が全く不足しています」などと危機的状況を訴える生の声が寄せられている。
また、酪農・畜産生産者支援への賛同を求めて一般消費者に呼びかけたオンライン署名は約2か月で約8万1000人に達し、個人要望書と合わせて農水省の担当者に手渡された。
同団体はこうした声を踏まえて、一刻も早く酪農家・畜産農家へ実効性ある対策を行うよう要請、具体的には▽酪農家の廃業・倒産を回避するため、搾乳牛1頭当たり10万円の緊急経営支援を早急に実施すること▽配合飼料価格の高騰対策を抜本的に拡充し、早急に実施するとともに自家配飼料についても対策を行うこと、など5項目の実施を求めた。
農水省の担当者を前に、農民連の長谷川敏郎会長は「生産者の個人要望書とともに、みずからの問題として考えるネット署名も約8万1000人に達し、改めて危機を打開して地域農業を守るため5項目を要望した。政府も緊急パッケージを作っているが充実したものになるよう対策をお願いしたい」と要請した。
農水省の担当者は、政府が予備費で支出する事を決めた配合飼料価格への補てんなど酪農経営緊急対策の内容を説明し、理解を求めたが、支援団体の出席者は「中酪(中央酪農会議)が行った調査では85%が赤字で、6割が離農を検討しているという驚くべき数値が出ており、不十分だ。離農や廃業・倒産を回避するためにも緊急措置を求めたい」と迫った。また、千葉県の酪農家は「私は毎日赤字を出しながらも、借金がまだかなり残っており、辞めるに辞められません。机の上で数字を弾くだけでなく現場の声を聞いてほしい」と訴えた。
これに対して農水省の担当者は「抜本的に環境を変えていかないといけないと考えている。需給ギャップを解消して乳価に転嫁し、持続的な酪農経営を実現することが大切であり、実質無利子融資などで足元の経営を支援していきたい」などと説明し、改めて理解を求めた。
農民連は引き続き、畜産・酪農の生産者への調査やオンライン署名の呼びかけを続けることにしている。
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