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畜産:JA全農畜産生産部

中山間放牧の経営モデルへ 分娩事故ゼロにチャレンジ2015年6月2日

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JA全農南那須牧場
・繁殖母牛を通年放牧
・実践的に技術を改善
・導入の「牛温恵」検証

 JA全農は和牛の増頭に向けて、双子生産技術や分娩事故低減のためのICT技術の活用などを進めているが、これらを農場で実践しているのが栃木県の全農南那須牧場(那須烏山市)だ。同農場では昨年7月から牛の体温をモニタリングして分娩兆候を電子メールで通報するシステム「牛温恵」の有用性や課題などを検証している。今回は同農場の最近の成果を紹介する。

約100頭の妊娠牛を通年放牧◆繁殖母牛を通年放牧

 全農南那須牧場は平成20年に和牛繁殖施設として開場し、母牛200頭規模となった23年から本格稼働した。
 おもな目的は▽200頭規模の繁殖経営の実証、▽繁殖牛と育成牛の飼養管理技術の実証、▽矢板市場を通じた和牛素牛の生産者への供給で、生産者やJAグループ関係者の現地視察や講習会を開き、その実践と成果を発信している。
 全農の職員は3名で繁殖牛と育成牛を管理し、派遣職員(現在は5名)が哺育などに従事している。飼養頭数は繁殖母牛181頭(和牛135頭、交雑種46頭、27年4月1日現在)。年間出生頭数は26年度で174頭だった。この農場の大きな特徴は繁殖母牛を通年放牧していることだ。33haに約100頭の妊娠牛を通年放牧、基本的に天候や季節に関係なく屋外管理し、省力化と飼料コスト低減を図っている。種付け前の牛には購入飼料を給与しているが、妊娠牛は放牧、分娩の1か月前に牛舎に戻している。
 少ない牛舎と限られた放牧地を最大限活用し、中山間地域での放牧による和牛繁殖経営モデルの確立もこの農場の目的である。

(写真)約100頭の妊娠牛を通年放牧


◆実践的に技術を改善

本格稼働以来、取り組んできたことのひとつに基本的な哺育・育成飼養技術の改善がある。
 稼働から1年間は市場に出荷する子牛の評価は良かったが、徐々に素牛の発育が悪くなり、販売金額も平均額を下回っていった。その原因を探っていくと、疾病が多いことだと考えられた。 稼働時には新築牛舎だったため、あまり病気が出なかった。そのため関係者の疾病対策に対する認識は低く、疾病の蔓延に気づけなかった。そこで全農家畜衛生研究所クリニックセンターの協力の下、改善策を検討した。
 第1は防疫対策への取り組みだ。哺育舎、繁殖舎、育成舎を衛生レベルごとにきちんとエリア分けし、そのうえでそれぞれの牛舎内に入るときには色分けした専用長靴に履き替え、さらに踏込消毒を行ってから牛舎に入るという行動を徹底させることにした。
 第2に効率的な治療を検討した。牛クリニックを実施し、農場内に存在している疾病や病原菌を特定、治療のための効果的な薬品の選定や、治療指針の見直しなどを行った。
 第3に従業員全員の知識向上を図った。子牛の観察が重要であることも改めて認識されたが、そのためには従業員の知識や技術の向上、再教育が必要なことも分かり、勉強会や斃死事故の原因分析などを繰り返すことで防疫の重要性についての意識を高めた。これまでの経験だけに頼らずに現状や課題をデータを通じて理解し共有することが必要だという。

(写真)井上直俊さん。平成23年入会

 疾病対策の他にも施設面の改善を行った。暑熱対策として自動噴霧消毒機を導入したが、これに消毒薬を混ぜて噴出することにより呼吸器病の対策として一定の効果が確認された。
 さらに牛が飼料を食べやすくなるよう飼槽の高さを上げるなどの施設改良や、ウォーターカップの大型化と設置場所の見直し、さらに秋から冬にかけてはお湯を与えるなど、いわばカウコンフォートの考え方に立って施設の見直しを行った。 また、昨年12月には育成舎に寒冷対策として牛舎の全面にカーテンを設置した。育成舎内の寒さを和らげることで目標としている1日1kg増を実現する育成牛が増えるなど手応えがあり、現在、効果を検証しているという。このような取り組みによって子牛全体の事故率が25年度は2.6%、26年度は1.1%と低下していった。

toku1506020901.gif


◆導入の「牛温恵」検証

 同農場は開設以来、全農の研究部署と協力し、開発された技術の実証も行っている。先に触れた科学的な防疫対策のための全農クリニックセンターとの連携もそうだが、全農ET研究所の優良血統受精卵を使った和牛の双子生産もある。交雑種に移植して母牛の受胎・分娩、双子産子の哺育・育成までの技術を検討、実証している。
 ただし、双子分娩は通常の分娩にくらべ事故が多い。25年度の双子分娩を除く単子の死産率は1.2%だったが、双子分娩のそれは8.8%と大幅に高い。
 この分娩事故を低減させるために昨年導入されたのが、モバイル「牛温恵」である。
 「牛温恵」は牛の膣内に挿入したセンサーが連続して体温を計測、そのデータをサーバーに通報し、分娩兆候特有の体温変化があると通報メールで知らせるシステムである。
 前日に比べ体温の低下が見られると、翌日には分娩がありそうだという「段取り通報」が届く。さらに1次破水するなどで機器が膣内から抜けた時には、「駆けつけ通報」として知らされる。
 昨年7月にセンサーを3台を購入し、分娩予定1週間前を目安に2卵を移植した交雑種に挿入した。この「牛温恵」の導入と検証に取り組んでいるのが、井上直俊さんだ。23年に入会し全農飼料中央畜産研究所笠間乳肉牛研究室を経て昨年3月からこの農場の勤務となった。
 「農場は研究とは違って実践のフィールド。使える技術かどうかなど、畜産農家や農場経営の視点で考えていくことが重要だと実感しています」と話す。

ウォーターカップを大型化し設置場所も見直した(左上)、飼料を食べやすくするためブロックで飼槽を高くした(左下)、牛舎の入るときは専用長靴に履き替え踏込消毒(右)

(写真)ウォーターカップを大型化し設置場所も見直した(左上)、飼料を食べやすくするためブロックで飼槽を高くした(左下)、牛舎の入るときは専用長靴に履き替え踏込消毒(右)


◆経験積みゼロをめざす

toku1506020905.jpg  昨年から「牛温恵」を活用した分娩を積み重ね、さまざまな事例を経験している。
 たとえば、最近ではゴールデンウィーク明けの5月7日―。前日に「段取り通報」を受け取っていたことからこの日の分娩を想定、帰宅後9時ごろに分娩が近いことを知らせる「駆けつけ通報」を受け取ったため、農場に再び出向いた。
 今までは駆けつけ通報後、2時間以内には生まれていたが、2時間が過ぎても母牛は分娩の兆候をほとんど見せなかった。念のために胎児の体位を確認し、正常位だったため、様子を見ることにした。一晩中分娩カメラ、あるいは直接分娩房で牛の観察を行った。
 そして、空が明るくなり始めた午前5時ごろにようやく母牛に陣痛の兆候が見られ、分娩介助したのが午前6時だったという。
 その間の経過を井上さんは野帳に「胎児生きている。でかい。奥にいる」「牛の目に涙。分娩が始まるか?」「胎児○、まだ袋の中、奥にいる」などと記し、出産が無事終わると「あー、しんどかった。しかし、今回の事例は牛温恵を活用する上で貴重な事例となった」と早朝の畜舎で記した。
 分娩事故をなくすためには介助をすることが必要で、こうした経験を積み重ねて、センサーを活用した上でどの時点で介助をすることが適切かを検討している。
 26年度の結果をみると、「牛温恵」導入前の4?6月期には双子分娩の事故率は30%だった。しかし、7月から今年3月までの事故率は3.8%と大きく低下している。27年度からセンサーの数を10台に増やし、交雑牛だけでなく分娩直前の和牛にも挿入し、分娩事故を防止に努めている。
 井上さんは「分娩時間をある程度把握できることは非常に有益。心の準備や作業スケジュールの調整ができる。分娩に立ち会えるため今まで救えなかった命が救える」などの効果を実感している。何よりも農場で働く人間として死産の減少は精神的なストレスの軽減になるという。
 「牛温恵」による分娩事故低減に今年度も取り組む井上さんは「ゼロが目標。モデル農場として恥ずかしくない農場づくりをめざしたい」と話している。

(写真)手にしているのが「牛温恵」のセンサー。分娩予定の1週間前を目安に挿入する

 

井上直俊さん。平成23年入会

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