畜産:JA全農酪農部
国産牛乳・乳製品の価値発信2015年12月18日
JA全農酪農部岡村部長に聞く
わが国の酪農は高齢化の進展などにより生産基盤が弱体化しているが、牛乳・乳製品は食卓に欠かせない重要な農産物であり、それを生み出す酪農は地域農業を支えている。今後も食料の安定供給と地域社会の維持のためにも生乳生産基盤を強化していくことは大切な課題であることに変わりはない。そこで最近の酪農情勢と生産基盤強化と需要拡大などの取り組みについてJA全農酪農部の岡村卓司部長に聞いた。
◆多様な家族経営を 地域連携で支える
――酪農生産基盤の弱体化が言われていますが、生産の現状についてどうみていますか。
わが国の酪農生産基盤は、酪農家戸数の減少とともに飼養頭数が減少する状況が続いています。ここ10年間では、戸数で約35%、飼養頭数で約20%減少しており、戸数の8割程度を占めている家族経営農家の離農が大きく影響しています。
酪農生産基盤は、その土地の気候・農業などに適応した地域毎の酪農から成り立っており、それぞれの酪農は、農家個々の創意工夫やきめ細かな飼養管理の上に成り立っているという多様性が、酪農の特徴であり強さであると思います。このような意味からも、酪農生産基盤において家族経営酪農家の果たしている役割は非常に重要であると考えています。
しかしながら、家族経営酪農家の戸数は減少に歯止めがかかっていません。新規就農や経営継承が進まないことが要因のひとつですが、酪農は、搾乳・給餌・繁殖・飼料生産などの農作業が多岐にわたるため、従事者の年齢が上がるに伴い労働負荷が増し、営農を継続することがより難しくなるという要因もあります。
こうしたなか、昨年度より畜産クラスター事業が創設され、酪農家などの期待が高まるとともにコスト削減などの取り組みが各地で進んでいます。今年9月時点では、同事業の協議会は全国に5百数十団体あり、そのうち酪農関連は300弱と過半を占める状況となっています。多岐にわたる専門的な知識を求められる日本の酪農において、農協・自治体など地域関係者の連携したサポート体制の構築は特に必要なものでありますし、酪農生産基盤の課題解決に繋がるものであると考えています。
――全農酪農部では生産基盤強化にむけてどんなことに取り組んでいますか。
酪農部では、酪農経営の優良事例の紹介・普及を目的とした「全農酪農経営体験発表会」や未来の酪農を担う高校生や大学生に酪農の夢を発表していただく「全農学生の夢コンクール」を毎年開催しています。今年は、大手飲料メーカーと連携した出前授業等を実施し、実需者から見た国産の牛乳・乳製品の価値や酪農の魅力を農業高校生などに伝える等にも取り組みました。こうした取り組みを通じて、学生の方々が酪農就農や酪農家をサポートする仕事に就いていただく契機に繋がればと思っております。
◆安定生産に向けて 共同販売機能強化
――生乳流通の現状と安定的な生産・流通に向けた今後の課題についてお聞かせください。
生乳は、毎日生産されることや種付けから生乳出荷までに約3年もかかるという特性があります。また、水分含有量が多く取り扱いに衛生的な管理が必要です。一方、牛乳等の消費は天候や量販店等の販売動向により日々変動しています。
安定した生乳販売や酪農家の総合乳代を確保するには、生乳の需給調整が不可欠です。また、その機能を発揮するためには、専用の輸送タンク、コールドセンターなどの貯乳施設および検査場などのハードに加え、生産や消費の動向など日々の情報収集も必要です。
こうした、生乳の安定的な販売、施設等の効率的運営および経費等の共同負担をする仕組みが必要となりますが、これらの仕組みは指定団体が中心に担っています。
今後の生乳取引については、「生乳取引のあり方等検討会」において、乳製品向け生乳やプレミアム取引を平成28年度より試行的に入札取引を実施する旨取りまとめられました。その効果等については、継続して検証が行われますが、酪農生産基盤や消費者への牛乳・乳製品の安定供給等に悪影響が生じないよう検証していく必要があると考えています。
近年、指定団体の共同販売を離脱する酪農家が増えていますが、今後も指定団体により多くの酪農家が参加し共同販売の機能を強化していくことが、酪農生産基盤の強化にも繋がると考えています。
また、生乳流通体制の合理化推進について、今年10月に農水省生産局長通知が発出されたところですが、本会や指定団体などの生産者団体は、生乳販売や集送乳などについて、更なる機能発揮や業務の合理化にむけた取り組みが今後まずます重要になってくると感じております。
◆国産乳製品に優位性 需要拡大へ役割発揮
――食卓に欠かせない牛乳・乳製品ですが、国際化も進むなか、国産乳製品を消費者に提供していく取り組みをどう展開していきますか。
牛乳・乳製品の総需要量は底堅い状況にありますが、国内の生乳生産量が年々減少していることから、海外品のウエイトが高まっています。しかしながら、国産乳製品は、風味などの品質の良さから堅調な需要があります。
酪農部では現在、台湾向けに国産乳製品の特性を生かした乳製品の輸出に取り組んでいます。現地では、美味しさなどが評価され、他国の競合品の価格に比べ3~4倍割高であるにも関わらず販売は順調に伸びており、品質・風味など国産品の優位性に手ごたえを感じています。
今後、国際化がすすんだ場合においても、国産品の安定的な需要が見込める生クリームなどの液状乳製品を中心に需要拡大に引き続き努めていきたいと考えています。
TPP大筋合意の影響については、ナチュラルチーズやホエイなど関税が引き下げられる品目を中心に、いずれ国産品との代替や価格への影響が生じる可能性があるため、酪農生産基盤に悪影響の生じないような追加的な対策も今後必要になると考えております。
最後になりますが、われわれ酪農・乳業関係者が一体となって国産の牛乳・乳製品の需要拡大などそれぞれの取り組みを一層強化していくことは当然のことですが、消費者の方に酪農の現状や国産の牛乳・乳製品の価値を深く理解していただくことが酪農生産基盤の維持・拡大にとって今後ますます重要性を増してくると考えております。
――ありがとうございました。
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