【農協研・三鷹現地研究会②】農業者の思いが原動力に 都市農業に驚きの連続 農協研究会・谷口信和会長2023年11月21日
すごかった東京農業の実力――。農業協同組合研究会の現地研究会が11月6日、東京都三鷹市で開かれた。農協研究会会長の谷口信和東京大学名誉教授が現地研究会の企画意図と結果総括をまとめた。
新川圃場で麦まきする三鷹ファームのメンバー
▼当初の企画意図 大都市の都市農業といえば誰でも漠然と、小規模だが高付加価値の施設園芸などの野菜・花き栽培を思い浮かべる。しかし、そうした農業にとどまらず、露地栽培の麦・野菜、植木(苗木)・果樹農業をベースにして、それらの加工から交流に至る幅広い事業を展開している東京都三鷹市の大規模な農業経営(法人と家族経営)とそれらを支えるJA東京むさしの緑化センターの活動実態に都市農業の可能性を探ることがねらいだった。
▼驚いた・その① 都市計画を作り変えつつある都市農業者の実力:都市農業は都市計画に組み込まれ、後退を余儀なくされる運命にあると思い込んでいた筆者の無知を思い知らされた。外環の高架方式を地下方式に変更させただけでなく、ふたかけ上部空間を活用して、農地転用された土地を再び「緑と農のある空間」によみがえらせるとともに、周辺地区と合わせて北野の里(仮称)全域に今ある緑や農地を守りつないでいく都市計画を地域住民とともに作り上げつつある功労者は都市農業者だった。
▼驚いた・その② 市民農園の理念を超えたコミュニティ農園の実証実験:新たな農地利用方式として実証実験が行われているコミュニティ農園は、特定の個人(家族)が特定の農地を排他的に利用する通常の市民農園ではなく、特定の農地をコミュニティーに属する参加者全体で共同耕作(作業)し、収穫物をシェアする新たな試み=コミュニティー創造の実験である。そこでは農業は単なる農産物の獲得が目的の実践ではなく、農を通じた地域住民の交流=新たなコミュニティーの創造がめざされている。
▼驚いた・その③ パンとビールにみる本物の地産地消:(株)三鷹ファームは大都市のど真ん中で「粗放的農業」である穀物栽培、それも小麦・大麦生産に取り組み、地元業者との連携によってパンとビールの製造を通じて本物の地産地消を実現している。しかもビールではホップと井戸水まで自家産と徹底しているのがすごい。
JA東京むさしの三鷹緑化センター
▼驚いた・その④ 農業者と都市住民の交流事業の幅の広さと深さ:市民農園・収穫体験・農作業体験(麦踏み)・芋煮会・ヒマワリ迷路・一時開放広場・コミュニティ農園...、これほど多種多様な交流事業を一つの農業経営体が実践している例にお目にかかったことはない。
▼驚いた・その⑤ ついに実現した東京産オリーブオイル:天神山須藤園は野菜生産から植木生産(年間30~40種)に移行し、さらにかんきつ類の植木から収穫したジャムの加工販売を追加するとともに、都内には類例がなかったオリーブの栽培から搾油までの一貫生産にウイングを広げた。「東京産」ブランドの話題性・希少性は都内レストランシェフの視察を実現しており、事業展開に大きく貢献している。東京農工大学馬術部から出る馬ふんやせん定枝を活用した堆肥を製造するほか、収穫作業などにボランティアを募るなどの連携・交流にも努力している。
▼驚いた・その⑥ 強力な三鷹農業は強力なJAが支え、そのJAを三鷹市がしっかり支えている:全国的に余り例のないJAへの自治体(三鷹市)の農業振興事業費の移管、農業公園などの指定管理者指定。農業者・JA・行政の緊密な関係とそれを実現する原動力になっている農協青年部活動。やはり出発点は農業者の自覚ということなのだろう。
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