人財育成とスマート農業でJAの革新を 農協に関わるシンポジウム開催 東京農大2025年11月25日
東京農大は11月13日、東京・世田谷区の東京農大世田谷キャンパスで、総合研究所農業協同組合研究部会による「2025年度(第18回)農協に関わるシンポジウム」をオンライン併用で開いた。
江口文陽東京農大学長があいさつ
開会にあたり、東京農大の江口文陽学長が動画であいさつし、「温暖化に伴う農産物等への影響が大きくなり、生産物をどのようにマネジメントするかが今後のカギになる」と述べた。
続いて、座長の白石正彦名誉教授が開催趣旨を説明し、シンポジウムのテーマ「農協運動における組合員・役職者が輝く人財育成の深化とスマート農業経営化の進化を両輪とした"農協の営農経済事業活動の革新"~気候変動レジリエンス、DX、フードシステム、エンゲル係数、政府の食料・農業・農村政策と米問題等を視野に~」に沿って基調報告を行った。
東京農大元教授の菊地哲夫氏は「青果物の物流問題の現状と農協の課題」を報告。農産物物流の特徴や課題として、①パレット輸送と標準化の推進、②モーダルシフトによる輸送手段の拡大(九州での県域を越えた共同輸送の事例など)を挙げ、今後の取り組みに期待を示した。
米問題については、東京農大の伊藤房雄教授が「戦後の農業構造の変化とこれからの米供給の課題・論点」を報告した。伊藤教授は戦後の農業構造の変化を説明し、①スマート農業と「みどりの食料システム戦略」を掛け合わせた稲作の先端技術開発の現況、②消費者ニーズに応える米流通システムのあり方、③集落営農組織の再編にあたり、資源保全や生活支援を含め地域コミュニティの課題共有が必要である点を述べた。
続いて、茂野隆一教授が「米価上昇が消費者行動に及ぼす影響についての論点整理」を報告した。米の購入行動では価格重視層とそうでない層の二極化が見られ、影響は低所得層で大きいと指摘。エンゲル係数も上昇し、長期的には「米価はある程度下がるが、米離れは固定化する懸念がある」と述べ、輸出拡大やインバウンド需要の取り込みが不可欠とした。
JAは組織基盤が土台
JA松本ハイランドの和田地区畦畔管理サポート組合の取り組み
JA松本ハイランドの田中均組合長は「JAは『自助を土台とした共助の組織』~協同組合らしい自発性をビルトインする取組み~」を報告した。田中組合長は、戦後の農協運動の中で「組合員組織という組織基盤強化がおろそかになり、自主自立の風土が弱まった」と指摘。JAのあるべき姿は「自助を土台とした共助の組織」であり、「我がJA意識」によって組織基盤が強化され、事業活性化や経営基盤の強化が進むと述べた。
同JAでは意識醸成に向け、中核的人材向けの「協同活動みらい塾」に加え、2023年に「支所協同活動運営委員会」を設置。その活動として、和田地区畦畔管理サポート組合の取り組みを紹介した。同組合は畦畔の草刈りを地域課題として捉え、現状把握や組織化、料金設定を行い、委託農家から労力軽減や作業集中につながると評価されている。大規模農家からも受託し、ラジコン草刈り機の共同購入や法人化も視野に入れている。
また、基盤組織である農家組合(生産組合)のリスタートにも着手し、議論を経て新たに「地域の『食』と『農』に貢献する自主活動」を役割として加えた。田中組合長は、組織・事業・経営の三本柱のうち組織基盤は土台であり、どれが揺らいでも倒壊すると強調。協同組合活動は知識の習得だけでなく、議論と実践から学び合う学習活動であると述べた。
人手をかけずに農地と生産を維持
JAとぴあ浜松の指導員支援ツール・タブレット
JAとぴあ浜松の竹内章雄組合長は「スマート農業による産地の農業支援と営農経済事業の展開」を報告した。竹内組合長は、人口減少に伴う農業人口の減少のなかで「人手をかけずに農地と生産量を維持すること」が課題であり、スマート農業の導入を進めていると説明した。
同JAでは2016年から指導員支援ツールとしてタブレットを導入し、非農家出身の職員でも営農指導に対応。土壌診断システムも新たに導入し「最短4日で分析結果を出せる」ようにした。2024年に設置した新選果場では、申し込みや結果確認がスマホでできる選果アプリを導入。ドローンによる農薬散布の拡大や、温暖化対策としてハウスへの遮光材・遮熱材塗布の試験など、技術導入に意欲を示した。
農政の課題と解決策
各報告を受け、コメンテーターの谷口信和東京大学名誉教授は、「令和の米騒動」や基本計画の混乱について「現場感覚を欠いた農政と、省内で情報が横に流れない構造」が原因と指摘。「需要増の兆候や米価上昇という明確なシグナルがあったにもかかわらず、農水省が過小な需要見通しに固執し、対応が後手に回った」と分析した。
背景には、アベノミクス期以降の「国内市場は縮小する」との姿勢があり、肉類や飼料穀物の国内需要増を直視してこなかった点を問題視。「気候危機と食料安全保障を軸に、自給率向上や備蓄のあり方、水田政策を組み立て直すべき」と述べた。またJAには「農政への追随ではなく、現場の実態から問題を立て、消費者(生協)と農協が連携して政策と運動をつくる視点」が必要とした。
農林中金総合研究所主席研究員の尾高恵美氏もコメントを述べた。尾高氏は、JA松本ハイランドの支所協同活動について、店舗統廃合などで失われつつあった「組合員が集い、協同する場の再構築」という意義を指摘。特に和田地区の畦畔管理は「課題を支所協同活動運営委員会が把握し、自ら受け皿をつくって解決した点」を評価した。
また、JAとぴあ浜松のスマート農業では「初期投資が重い農家に代わりJAが導入することで費用を抑え、利用拡大で規模効果が得られる。土壌診断による施肥最適化も所得確保に寄与している」と説明。両JAの事例について「地域課題を組合員組織が主体となって解決し、DXを活用しながら農業と地域の持続性を高める取り組み」と総括した。
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