守りではなく攻めの事業展開を2017年3月6日
村田興文氏のJA東西しらかわにおける記念講演から
別掲のように福島県のJA東西しらかわは、3月4日全役員・全職員が参加して新年度への取組み決意を新たにするために「平成29年度事業計画発表会」を開催。その記念講演として、村田興文(一社)農協協会特別相談役(元シンジェンタジャパン社長・会長)が、「グローバル食料・食糧リスクと日本農業の成長機会―農業協同組合のビジネス機会とビジネスモデル」をテーマに記念講演を行い、参加者から多くの反響があったので、その内容の概略を紹介する。(別掲は文末にリンク)
村田興文氏が講演の冒頭で、「日本の農業の置かれている状況はマイナスではなくプラスであることを理解してもらう」ことが今日の講演の大きな目的だと述べ、その理由と農協が将来に向けて取り組むべきビジネスモデルについて語った。
そのなかで村田氏は、世界や日本の農業についてマスコミ等で正しいデータに基づいた報道がなされていないので、多くの人が大きな誤解をしているとしていくつかの例をあげた。例えば「世界最大の農産物輸出国はアメリカだが、最大の輸入国は中国だ」と思っている人が多いが、実は最大の輸入国もアメリカであり、EUも輸出も多いが輸入も多く、貿易面でのバランスが取れているということを、正確なデータに基づいて解説。
その一方で日本は、小麦や大豆、タマネギなどで国内全耕地面積の2.7倍の面積を海外に依存し、農産物輸入額は世界第4位、アジアで第2位だが、輸出はごくわずかで、他の先進諸国に比べて、輸入と輸出が極端にアンバランスになっている。また、近年、農産物輸出が増加はしているが、加工品が多くその原材料の60%が輸入原料であるとも指摘した。
◆世界の需要にも目を向けて
その上で、将来に向けた農協のビジネスとして
▽国内需要だけではなく、世界の需要をみていくことが大事であり、米国やEUのようにバランスの良い農産物貿易をめざすべきであること
▽国内においても加工需要が大きくなっているので、中食・外食と連携し、ニーズに合わせた生産をしていくことが大事であり、そのときに他のJAと連携した周年供給体制やニーズに合わせ連携した供給体制を構築する必要があるが、加工や物流のプロとの連携も大事であることなどあげた。
そのことで、どういうビジネスモデルで、どこと連携していくのかを考えることで、JAの選択肢は増える。また、JA出資の生産法人やビジネスに出資してもらうことで、准組合員の農業参画をはかっていくことも検討課題ではないかという指摘もされた。
◆人材育成が最大の課題
そして、いずれにしてもJAの事業は「人に依存している」のだから、JA職員の意識改革と人材育成をどれだけ有効に行うことができるかが、これからのJAの最大の課題だとした。
そして最後に「守りに徹すると市場に出る力が奪われる」ので、積極的に前に向かって事業展開するべきだと結んだ。
村田氏の講演後、感想を聞いたが「世界や日本の農業について誤解をしていた。講演を聞いて"目から鱗が落ちた"ことを実感した」とか「もっと広い視野から事業の展開を考えていくことが大事だと教えられた」など、JAの役職員の人たちに、いままでとは違う新鮮な問題提起されたことが実感されていた。
(写真)講演する村田氏
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