JA全農 香港に現地法人設立へ 輸出を拡大2018年1月30日
JA全農は日本の農林水産物の最大の輸出先である香港で、さらなる輸出拡大をめざし3月に現地法人を設立する準備を進めている。現地でマーケットを徹底的に調査し、日本の生産者の手取りの増加につながるような生産・輸送・販売体制の確立をはかる。
◆インバウンドにも着目
香港では官民あげて日本産食品の紹介、販売に力を入れており、日本側も在香港日本国総領事館が地元コミュニティと協力し、日本の魅力をもっと知ってもらおうと2016年から「日本秋祭りin香港-魅力再発見」を開催している。
日本秋祭りには、日本の地方自治体、文化団体、企業と香港の関連組織が参加し、10月から11月にかけて138のイベントを集中的に展開、43万人以上を集めた。
日本産農産物の売り込みに力を入れている在香港日本国総領事館の松田邦紀大使は1月29日にJA全農の長澤豊会長を表敬訪問した。松田大使は「香港側から、日本はブランドとして価値があり人が集まる、ぜひ来年以降もやってほしい、と大変な引き合いが来ている。ぜひ全農もストリート全部借り切るぐらいの気持ちで参加してほしい」と呼びかけた。
長澤会長は「全農としても今年から参加したい。それがニュースとなり、国民の理解醸成につなげていきたい」と話し、3月には香港に現地法人を開設する手続きを進めていることも明らかにした。 松田大使は、全農の香港への本格的に進出について「多くの香港側の食品関係企業はぜひ取引きさせてほしいと、大いに期待されています」と応じた。
香港は2016年まで過去12年間、日本の農林水産物の最大の輸出先で28年では輸出額7500億円のうち、1800億円と25%近くを占める(2位は米国の1000億円)。
また、2017年の香港から日本への旅行者数は223万人で前年比21%増。香港で旅券を所持しているのは約600万人だとされることから、3人に1人が日本を訪れたことになる。在香港日本国総領事館によれば香港人旅行者の約20%、5人に1人は日本を10回以上訪問しているという。
JA全農はこうしたインバウンド需要にも着目し、▽地方も含め日本産農産物、食文化の体験、▽おみやげとしての国産農産物・加工品の購入、▽香港で日本産農産物を購入してもらうための輸出拡大、を視野に入れて事業を展開する。
(写真)JA全農を表敬訪問した松田・在香港日本国総領事館大使(左)。JA全農からは長澤会長、神出理事長、岩城専務、戸井チーフオフィサーが出席した。
◆アジア輸出のハブに
その輸出拡大のためJA全農インターナショナルが3月に現地法人を設立する。職員を3名常駐させ、マーケット動向の把握と卸や食品企業などとの恒常的な情報交換を通じて、持続可能な生産・輸送・販売体制の確立をはかる。
JA全農によると香港向けの輸出額は29年度は牛肉11億円、青果物20億円、米2億円など35億円となる見込みで「できるだけ早く50億円にしたい」(JA全農輸出対策部)としている。とくに花きのマーケットが大きいことから、高級レストラン、ホテルなどをターゲットにマーケット動向や物流実態の調査に基づいて輸出実現をめざす。
香港はマカオと隣接する中国本土をあわせて橋や高速鉄道などのインフラを整備し、まとまった経済圏を作る動きがある。JA全農としては、アジアへの「輸出のハブ(軸)」として香港を位置づける。そのほか3月には台湾に現地法人を設置するほか、タイ、中国への拠点設置も検討している。
一方、インバウンド需要のうち、日本産農産物をおみやげとして購入するニーズに対しては、JAの直売所などから香港などの現地に直接送り届けるスキームも検討するなど「地方創生も含めた輸出策を考えたい」としている。
(関連記事)
・香港日本農水産物・食品輸出商談会開催(18.01.18)
・戦略的輸出基地に181産地-コメの輸出プロジェクト(17.11.01)
・食品宅配を中国で展開-オイシックスドット大地(17.10.13)
・農林水産物輸出4.5%増 29年上半期(17.08.21)
・【米生産・流通最前線2017】30年産問題ーどんなコメ「需要」に応えるのか?(17.08.07)
・【JA全農米穀事業部】多様な集荷対応の強化 目標310万トン確保-29年産米生産・集荷・販売基本方針(17.03.22)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日