異業種交流で農業の課題解決へ JAも加わり深谷市が「アグリテック集積宣言」2019年6月28日
地元の偉人、渋沢栄一が新1万円札の肖像画に決定し盛り上がる埼玉県深谷市は27日、東京・大手町のサンケイプラザで「DEEP VALLEY アグリテック集積宣言」を発表した。農業の課題を解決するアグリテック産業を誘致、集積するための産官学連携による取り組みを推進する。農業を軸とした持続可能な社会の実現に向けて、市内3つの農協をはじめ、農業に関わる多様な企業が連携し、新時代の農業を発信してゆく。
アグリテック集積推進パートナーの代表者。
左から埼玉工業大学・内山俊一学長、JA花園・松本博道組合長、JA埼玉岡部・今井一二組合長、JAふかや・石澤清治組合長、小島進市長、深谷商工会議所・村岡正巳会頭、ふかや市商工会・沼尻芳治会長、トラストバンク代表取締役・須永珠代氏、マイナビ執行役員・池本博則氏
農業が、工業や商業と連携することで農業をとりまく問題を解決し、地域の変革をめざす今回の取り組み。「アグリテック」とは、農業とテクノロジーを組み合わせた造語で、テクノロジーを活用した革新的な農業をあらわす。
アグリテックの集積を推進する今回の取り組みには、JAふかや、JA埼玉岡部、JA花園の3農協と深谷商工会議所、ふかや市商工会、埼玉工業大学、トラストバンク、マイナビの計8つの組織がパートナーとして参加している。
「アグリテック集積宣言」にあたり、深谷市の小島進市長は、「渋沢栄一翁ならこの時代に何をするだろうといつも考える。農業が大きく変わる今、農業分野への参入を希望するベンチャー企業と地元をうまくマッチングしていきたい。これからの農業を畑の中、泥の中で一緒に考え、首都圏の近郊農業の壁や、こうすればもっとよくなるんじゃないかという知恵を出し合って一致団結してやっていきたい」と話した。
同市の農業産出額は350億円で全国23位。名産の深谷ねぎなど野菜産出額は全国6位で農業は基幹産業だが、農家の高齢化による後継者不足など農業の未来に大きな不安を抱えている。
今回の取り組みの一つが、10月に行われる「アグリテックビジネスコンテスト」の開催で、同市が抱える農業課題を解決する先進的な技術(アグリテック)を提案する企業を募る。
受賞者には、総額1000万円の出資賞金が贈られ、実証のための農地の提供を受けるなど、現場の担い手と連携しながら、オール深谷で実現に向けて支援していく。
このほかにも、農業の現場で起きている課題を集めた農業課題データバンクの創設や、農業課題と技術をつなげる活動、農業従事者と起業家など異業種交流を促進していく。
(写真)深谷市と農業の未来について語る小島進市長
この取り組みに欠かせないのが地元農協の協力。JA深谷の石澤清治代表理事組合長は、「やはり、課題は収穫の機械化です。今年4月にIT農業を推進するため新しい組織を作り、営農指導員が現場の組合員に聞きながらどんな方法をとるべきか研究しているところ。農業者の所得の増大、農業生産の拡大のために深谷市のアグリ構想に呼応して一緒になって推進していきたい」と話した。
また、主にブロッコリー、トウモロコシ、ネギを出荷するJA埼玉岡部の今井一二代表理事組合長は、「野菜の収穫作業はどうしても手作業になるため、現在は外国人実習生の力を借りている。将来的にはロボットやITを使った収穫機械が使えるよう、研究開発していただけるならうちでもほ場などを提供できると思います」と取り組みへの協力姿勢を示した。
一方、JA花園の松本弘道代表理事組合長は、「高齢者が多いので問題は労働力。そこを機械化やロボットで軽減したい。ここは渋沢栄一の忠恕の心で思いやりのある地域です。企業を誘致して一緒にやっていきたい」と新たな取り組みに期待を込めた。
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